03/08/02 日本海
だらけ気分で海上。
ねいさん、妹の乗った船はタイタニック号ではなくて、実は蟹工船だったようです。それが証拠に、この二等寝台には窓がありません。朝も昼も夜も、終始一貫、薄暗いのです。これはきっと、どこに連れていかれるかわからないようにする資本家どもの作戦に違いありません。二等船室を覗いてみれば、度重なる搾取に絶望し、気力を失ったたくさんの同志諸君がぐったりと雑魚寝しているではありませんか。窓があるだけ羨ましい。羨ましいが、この混沌の中で寝るのはちょっと遠慮したい。
朝の船内放送が「ラジオ体操をやるナリ。はんこもくれてやる。ちびッ子ども、船尾にあちまれー」というようなことを言っていたので、とりあえず、外に出て船尾に向かう。小学生時代、6年間ずっと夏休みのラジオ体操は三日坊主で終わってしまったわたしにしてみれば、旅行に出かけてまで、しかも船上でもラジオ体操を諦めないちびッ子様たちの精神には恐れ入るものがあるけれど。あのはんこカード、全日程コンプリートすると、なにかもらえたりするんだろうか?優秀バッチとか。

日本海を航海する船の上は遮るものなく、まだ朝も早い時間帯だというのに、すでに太陽が脅威的な威力を発揮している。ふむぅ、こんな中でほんとにラジオ体操なんかやっているんだろうか?船尾に着いたが最後、怪しげないかだに乗った賊が登場して、この世の楽園なんかに連れていかれやしないだろうか?
楽園へ呼び込むような賊の声が船尾の方から聞こえてくる……。
「じゃんけん、ぽい、やーっ」
ぽいやー?
じゃんけんを“いんじゃん”と言われたときにも度肝を抜かれましたが、それに匹敵するインパクトがありますです。しかし、初めて聞く掛け声だよな、ぽいやーって。行ってみるとラジオ体操はすでに終わり、じゃんけん大会が催されていた模様。船尾に着いてみれば、大会は佳境に入っており、決勝戦の決着が……あ、勝者インタビューに答えているのは大阪キャンパーの人じゃないですか。幸先のいいというか、一体何をしているんですか。今、彼の心の中には確かに楽園が見えているに違いありません。
ここで2人に合流できたということで、朝ごはんを食堂に食べに行くことにする。普段は朝は食べても食べなくてもどうでもいい派なんだが、大人社会の一員としてはここは一発、協調性発揮の場面である。
混み始めている食堂はカフェテリア方式。つまり、自分の欲しいものを勝手に取った後、レジにて精算するのだが、このラップのかかった食品は……高くねえですか?鮭一切¥300、鯖みそ煮一切¥350、みそ汁¥120、ごはん¥200。これは暴利じゃねえですか?暴利。資本家どもはここでも血の一滴まで絞り取るつもりらしいです。
暴利を貪り喰った後は、らいらっくラウンジなる場所でだらーっと予定を立てる。動作のひとつをだらだらとしないと、時間が余りまくって仕方がないのである。だらーっとソファに寝そべるわたしの初日の予定は、着いた日には美深のキャンプ場に行くこと、宗谷岬、摩周湖に行くことくらいが北海道の予定だったのだが、お二方の指導により宗谷岬は断念することにする。カブ夫の力をもってすると、ここに行ってしまうと他は回れなくなってしまうとのこと。根性出しても、駄目かしらん?
らいらっくラウンジで寝てみたり、リスニング・ルームで寝てみたり、はたまた甲板で寒い想いをして、指の間から砂をこぼすように時間を過ごしている内に、やっと夜が来る。長い。一日。長すぎる。

汽笛をぼーっと鳴らし合うのがなんとも可愛い感じ。
明日はやっと上陸。天気予報によれば……雨。いつものことか。はふー。覚悟を決めてさっさと就寝するのでありました。