03/08/03 北海道美深町
雨に打たれてザメにらぶ♥。
2:30 船内放送で起床。朝というか、まだ夜の範疇の時間帯なのだが、さっさと起きて混む前に急いでトイレに向かう。女子は用意が大変と相場が決まっているので、ぐずぐずしていると洗面台の前が戦後の闇市さながらの状態になるのである。朝起き抜けに焼肉を喰えるくらいの朝型体質に生まれたため、空いている内に悠々と洗面台を使用することができる。これはご両親様に感謝でございます。
用意を終え、荷物も全部寝台から持ち出して、コーヒー片手に甲板に出てみる。これは……やべえです。眠っている間に何ヶ月か経ってしまったかのような寒さ&雨なのですよ。先に北海道入りしているキャンパーの人たちからメールで「寒いからフリース必須」だとか「シュラフは冬用で」だとかのメールが来たときには、「わたしを騙そうって寸法ですかい?もしかして、パスポートとかビザが必要とか言い出すんじゃないべね?」と思っていたが、ごめんなさい。さすがにあなた方は正しかったです。降参したくなるくらいの寒さです。8月なのに。夏真っ盛りなのに。ちなみに今のわたしの格好はといえば、Tシャツ、長袖しまシャツ、フリース、いつものアノラック、そしてカッパの重ね着。11月の和歌山行きよりか厚着って、一体どういうことなんですか、北海道。
さて、こんなに張り切って用意をしても、乗船とは逆に、下船はライダーの人たちが最後である。荷物を再度積み直して、しとしとと雨がそぼ降る中を出発する。本日の予定としては、まずは札幌に向かい、クラーク像&時計台を見に行く。だって、北海道ときたら、これじゃないですか?朝早い内なら空いているだろうし。大志を抱いてツーリングしたいですもの。ねえ?クラーク先生。
札幌に向かうR5は複数車線の高速風味。北海道ときたら、青く広い空&青く広い原と相場が決まっているものだと思っていたが、そうでもないらしい。しかも、雨降り・鉛の空だし……やっぱり、わたし雨の人ですかね?それともカブ夫がですか?
更に言うならあれだ。なんか、信号の連結、悪くねえですか?一般道路の法定速度60km/hに近い速度で走っていても、1個毎に赤信号に引っかかっている気がするんですけど。これもわたしに何かを諦めさせる北の国の陰謀ですかね?
もう一つ言うなら、道民の人。おまえ様たちの交通ルールはマイルールによって定められているのですか?いくら道幅が広いからって、1車線なのに直進車が2台並んで信号待っちゃ駄目だろう。つーか、赤信号は待て。いくら車が来ないからって、赤信号なんですってば。赤から青への変わり際にじりじりと発進する車なら大阪にもいるけれど、堂々と赤信号の最中に突っ込んでいく車を見るのは初めてだ。しかも、悪そうな車じゃなくて、普通の車が。--ミー&カブ夫の素敵なボディは、夏休み終了後も無傷のままでいられるんだろうか?ねいさん、妹は雨の中不安になってきました。
不安なまま、爆音スピーカー仕様のバイクに抜かされたりしつつ、早朝の北海道をカブ夫号はひた走る。程なくして札幌に到着する。JR札幌駅と北大は簡単に見つけられたものの、肝心の観光地2つが見つからない。おまけにカッパズボン。耐水性に難有りなのか、じわりじわりと水が染み込んでくる。何故に本州を離れても、わたしはパンツを濡らすのか。不快に濡れそぼった体で小一時間程うろうろするのだが、どうしてもわからない。ここに長居は命を危険に晒すことになりかねない。なんしか信号の見えてない車の走る国だもの。撤退撤退。わたしの人生は撤退だらけですよ、全くもって。

29.2kmだそうだが、正直、あまりよくわからない。
とりあえず、この辺はまだ都会。
直線道路の看板を拝んだ後には、R275に進路変換する。“奈井江15号”がわたしの曲がりたい交差点なのだが、奈井江16号とか奈井江17号とか紛らわしい名前が多すぎで惑わされっ放しである。どうも交差点や道表示に数字が多用されていると、無機質な感じというかやっつけ仕事的なものを感じてしまう。別に交差点に愛情を持ちたいわけじゃないが、もうちょっと味わい深くてもいいと思うんだけど。
交差点の表示を凝視しながらR275に入った後、ひとまずホクレンにて給油する。このホクレンというガソリンスタンドでライダー様が給油すると、なんと浮かれた旗を頂けるそうなのである。これは是非ともホクレンで給油してライダーっぽさを演出しなければ。ちなみに、旗は道北・道南・道東の3種類にエクストラ・ボーナス的な旗が何種類かがあるのだが、今いるところは一体どの辺りになるんだろうか?地理さえろくに頭に入っておりません。
そんな不勉強なわたしがもらった旗の色は青。つまり、ここはすでに道北エリアということらしい。ライダーの皆様は後ろの荷物のところにさり気なく旗をつけるのだが、カブ夫さんは公用車の如く、前カゴに装着してみた。はためく旗がなんともバカっぽく、目に入る度に笑いがこみ上げてくる。傍から見ると、“雨の中、荷物満載にした原付に乗る薄笑いの不審な女”という近づくのも嫌な光景ができあがってしまうわけだが、それも旅の思い出の一つとしてアルバムに収めていただきたいと切に願う。だって、笑っちゃうもんは仕方あるまい。雨の中、ばたばたばたって旗がはためくんですよ?ばたばたばたって。
にやにやと水滴を滴らせながら、北竜町に入る。北竜町のキャッチフレーズは「太陽を味方につけた町」だとかで、65万本ものひまわりの花が植わっているそうである。今日は太陽は味方になっていないようだが、まさかひまわりまでもが裏切っちゃいないでしょうね?のぼりの立っている角を左折し、中に入っていくと……ねいさん、ひまわりだらけですよ。故ハムスキーがこの光景を見たら、くるくる車輪を回さんばかりのひまわりの数であります。
空き地にカブ夫を止め、家からはるばる共に長旅をしてきた野別くまぞう(シロクマのぬいぐるみ。トロント空港生まれ)をヒップバッグに載せて、ひまわりを見学しに向かう。この雨の中傘をさしていないのはわたしぐらいなのだが、持っていないものは差しようがなく。カッパのフードをかぶっての見学である。

ひとしきり見て回り、カブ夫の元に戻り、鞄を前カゴに戻すと、野別くまぞうが消えている。あれ?くまぞう?さっき、ひまわりの迷路を見るやぐらに登ったときはいたですよね?消えたと入っても、ものの数分のこと。多分、地面に落ちて泥まみれになっているだろうと戻ってみるが、いない。く……くまぞう。早々に君は姿を消すのか?絶対に犯人はその辺にいる筈、と子どもらに睨みを利かせるも白い姿は見あたらない。くまぞう、君は北海道に定住しちゃうのか。幸せになれよ、くまぞう。

↑くまぞう様の元気なお姿
上陸数時間でロマン溢るる北海道へのステレオタイプな妄想も打ち砕かれ、相棒野別くまぞうも去ったわたしの唯一の心の拠りどころとなった旗をばたばた言わせながら、再出発する。神様、わたしの人生は失うものばかりの人生なのでしょうか?さよならだけが人生とは言いますが、まさか。このまま大阪での生活にもさよならってことはねえですよね?ライダーの聖地だというのに、ちっともライダー様を見かけないことが、さらにわたしの不安感を盛り立てる。絶対騙されてる。ここは北海道じゃねえ。偽北海道なんです、きっと。
拝啓、本物の北海道様。そちらもこのような天候なのですか?偽北海道はひどい天候で、カブ夫に吊されたデジカメもずぶ濡れです。そういえば、デジカメは精密機械だと思うのですが、とりあえずは撮れているので大丈夫だと信じております(いいえ、本州に戻ったとき、データは全滅しているでしょう)。いつになったら、ライダー様……というか、人間を見かけられるのでしょうか?わたしは一生偽北海道に閉じこめられてしまうのでしょうか。そうだとしたら……もう、ホーミーの練習でもするでしゅ。これでキツネさんとかシカさんとかクマさんが出てきて、一緒に楽しく歌ってくれたら、勇気100倍でアンパンチも炸裂しますよ?うーーーいーーー。駄目だ。顔が濡れて力が出やしねえ。
そんなわたしに追い打ちをかけるかのように、“日本最低温度−41.2℃記録”といった看板が立ちはだかる。はぁ?摂氏じゃなくて、華氏の間違いじゃないんですか?−41.2度って。騙しちゃいけねえですよ。でも、華氏−41.2度なら、摂氏に直したら−5度くらいだし。このくらいの気温なら最低ってことにはなり得ないしな……。つーことは、−41.2℃って、死んじゃいますよ。そんな気温を記録したようなところなら、8月に冷たさに苦しむってのも道理ってわけで……。北海道、侮り難しなり。ねいさん、想像を絶する世界にすでにやられてしまいそうです。ここで果ててもいいですか?
と、力尽きそうになるが、そうするとなかなか死体を発見してもらえなさそうな気がするので、頑張って人気のあるところまで進むことにする。行き倒れるにも一苦労だ。

ここで予備ボトルから給油。
ちなみに道端で四つ葉のクローバーを見つけた。
メルヘン。
ずっと上り気味だった道を下ると、そこは美深町である。美深町には川がある。人もいる。車も走っている。川ではいかだ大会が催されていて、しばしそれを眺めてから、また更に先を進む。今夜の野営地は美深アイランドキャンプ場というところ。そこで埼玉キャンパーの人などがテントを張っている筈なのだ。ジンギスカンを食べさせてくれるという彼の甘言に誘き出され、大阪からはるばるここまで来てしまった次第である。
13:00、小樽を出てからすでに8時間経過、やっと雨も上がりました。美深の道の駅からキャンプ場の方に入り、キャンプ場のいちばん入口付近にカブ夫を止める。ここにやけに生活感の漂うテント群があるのだが、恐らくこれが埼玉キャンパーの人のテントじゃないかと当たりを付けて近づいてみる。大正解。ホワイトボードが木にぶら下げてあるのを見てみれば、わたし宛の伝言が書かれてある。
それによれば、キャンパーの人たちは、先ほど川で見たいかだ大会に参加しているとのこと。あそこで結構見てたんだけどな。わからなかった。つーか、こんな寒い中、川に入ってるですか。もう北海道に来てすでに1週間や2週間経っている人たちなら、気候に体が慣れているんだろか。いや、でも寒いことには変わりない筈。
川に入っている人たちに思いを馳せるのは後にして、とにもかくにもテントを建てて、目の前にある風呂に入りたい。ざぶーんと。カッパの下のジーンズは一段濃い色に変わってしまっているし、勿論、スニーカーは歩く度にちゃぷちゃぷ音を立てている。多分、つま先付近はふやけているに違いない。鼻水をすすり上げながらのテント設営をする。しかし、若いときの苦労は買ってでもしろといいますが、わたしはそんなに若かないので苦労はしたくないんですよ。お天道様、お願いいたしますよ、ほんとに。
--極楽の時間♥--
冷え切った体に風呂は最高でした。
テント設営中にキャンパーの人たちが帰ってきていたのだが、風呂から戻ってみると、出掛けているのか見あたらない。まあ、夜ジンギスカンが喰えればそれでいいか。ジーンズを乾燥機にかけに洗濯棟に向かうと、そこの近くに怪しげな建物があるのが目に入った。チョウザメ館ですと?
勿論、入らないわけにはいくまい。入ってみると、さほど広くない室内に、チョウザメの水槽が幾つか置いてある。水槽は大チョウザメ、中チョウザメ、小チョウザメときっちり分けられていて、その中でチョウザメたちが縦泳ぎする様はなんとも愛らしく……もう、辛抱たまらんっす。ザメ、飼いてえ。ザメ。
生きた化石と言われるだけあって、その肌の質感がなんともいい具合なんである。尖った鼻先もキュートなことこの上ない。ちょこっとつかみ取りしちゃ駄目かな。どんな感じか触ってみたいっす。なんなら人差し指だけ、先っちょだけ水槽に入れちゃ駄目かな。お金持ちになったら飼おうと思っている生き物リスト(今のところ、シーラカンス・カブトガニ・ゾウガメがリスト入り)に加えとこう。
気がつけば、チョウザメ館で1時間程うつつを抜かしてしまった。管理人の人もいないみたいだったし、チョウザメの1匹くらい失敬してきても大丈夫だったような気もしないでもない。いっそのこと引き返して、程よき大きさのザメを1匹……とも思ったが、これが新聞沙汰になると面白そうな記事を書かれてしまいそうなので、やめておく。箱を水槽代わりにすると、荷物が大変なことになるし。
テント付近に戻ると、みなさんお揃いである。ここからはいつものパターンで、久しぶりの人、よく会う人、初めての人、総勢7人で、埼玉キャンパーの人が持ってきた本格的なジンギスカン鍋囲んでジンギスカンをつつき、飲酒する夕べとなるのだが、ねいさん、羊、うまいですよ。羊。画像をお見せできないのが残念なくらいです。
異様に繁殖している蝿を避けながら、肉を食い、酒を飲み、場所が変わってもやることは変わらない野営の夜は更けるのでありました。