>03/05/04 熊本県阿蘇町

サプライズ野郎登場。

4:15 携帯の目覚ましバイブで起きる。うー、どうかなー。寝袋に入ったまま、テントのファスナーを開けて外を見てみると、ちょっと薄曇りっぽい感じだ。昨日立ち寄ったライダーハウスの人が「杵島岳から登る朝日、サイコー!」とかなんとか言っていたので、山登りの好きな原付キャンパーとお調子者のわたしは「杵島岳に登って朝日を見よう」と盛り上がったのだけれど、なんしか寝たのが1時過ぎ。これでこの時間に起きての山登りなんてできるもんかな?原付キャンパーのテントに目を向けてみるが、彼も起きている様子がない。どうかな。でも、一声かけておくか。と、文明の利器・携帯の登場である。左の耳から呼び出し音、右の耳から着メロが聞こえるという素敵仕様。つーか、直接テントまで出向けばいいんだろうけど。

「今日、どうしよう?」
「どうしよっか?」
お互い、相手が切り出すのを待っている間を挟んで、どちらからともなく
「やめよっか」
「やめようか」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」
となった。こんな薄曇りじゃ、朝日なんか見られないね、と酸っぱい葡萄的思考で自分の根性なしぶりを棚上げして、いざ二度寝。次は普通に6時台に目が覚める。結構、晴れてるかも。

大阪キャンパー2、静岡キャンパー、神戸キャンパー、原付キャンパー、わたし以外の人たちは今日で撤収してしまうので、彼らにとっては今日の午前中が阿蘇最終日だ。最後の阿蘇山を満喫すべく、みんなもぞもぞとヘルメットを被り出す。

わたしも今日はカブ夫さんで阿蘇山を攻める予定。人より先に、勝手知ったる阿蘇山上への道を軽快に走りだす。初日にカブ夫がなかなか上らなかったのは、荷物が重すぎたせいなんだよな。今なら結構スピード出して調子よくいけてるし……あっという間に大阪キャンパー2に抜き去られました。峠とかを攻めるような人の走り方って、あんななんだろうなー。その後に神戸キャンパー、埼玉キャンパーが続く。いいんです、カブ夫さんの価値は抜かれることにあるんですから。噛ませ犬とでも呼んでいただければそれで満足です。

てんでばらばらなバイク カブ夫氏に興味津々の埼玉キャンパー氏。
「そんなに興味がおありなら、最近購入されたばかりの、その大型バイクと交換してあげてもよろしくってよ」と申し出てみたら、その大型バイクは中古購入のため、カブ夫よりも遙かに安いらしい。
それは嫌だ。

水飲み場にも映る山 売店で試食してみたり、ソフトクリーム食べてみたり、馬串焼き食べてみたり、草千里でまったりと過ごしてみたり、丘の上で(原付キャンパーが)ヤッホーと叫んでみたり、でき得る限りのことをして過ごす。
今日は湖の水が少ないなあと思っていたら、これは湖ではなく馬の水飲み池だと教わる。
なるほど、給水口もある。

まだ火口を見ていない組は、これから火口に向かう。そうでない組のわたしたちは、山を下りることにする。勿論、先頭を切るのは下り勝負のカブ夫番長である。同じ原付の原付キャンパーを2番手に従え、以下大阪1,2、埼玉、初対面東京さんら大型バイクの舎弟どもを引き連れて、メーター振り切りで直滑降&チョッカコーですよ?野郎ども、俺の生き様を見届けやがれ。

先頭を切ったまま、カーブを曲がりきれずに牛の群に突っ込むことなくキャンプ場に戻れた。生きててよかった。カブ夫'sメーターは60km/hまでしかないので、それ以上は存在しないものとして扱われているのだが、カブ夫の意外な底力に嘆息したキャンパーが言うには70km/h強は出ていたとのこと。カブ夫さんだって、やればできる子なんじゃね?

撤収するキャンパーの人たちを見送り、残ったわたしたちは昨日行った“景色のいいところ”に向かう。埼玉キャンパーも山菜叱りキャンパーも帰ってしまったので、あの場所を知るのはわたしのみ。勢い、わたしが案内役ってことになるのだが、そんな大役仰せつかれないですよ……。場所の名前すら覚えていないのに。しかも、今日は昨日と逆コースから行くっていうじゃありませんか。

不安だらけではあるものの、要は宝の地図の「豆腐屋の角」がどこかが問題なのだ。わたしだって、やればできる子なんじゃよ?意地を見せるですよ?角探しに専念しながら走ると、結構簡単に見つけることができた。そんなもんか。先に来た原付キャンパーの人と角に立ち、ぼぅっと後のキャンパーの人たちを待っていると……何故か彼らは3人の筈が4人に増殖しています。人が減って寂しくなったから、誰か隠し球を持ち出したんだろうか。その隠し球な彼は九州の人で、大阪キャンパー2の知り合い。途中で合流してきたらしい。

原付×2、中型×2、大型×2というトランプで何かの手になりそうな6台構成になったのも束の間、“景色のいいところ”への最終入口で大阪キャンパー2→神戸キャンパーの中型、神戸キャンパー→静岡キャンパーのオフ車の後ろへと乗り換える。大阪キャンパー2のバイクは、大阪キャンパー1と同様、プラモデルみたいなバイクなので砂利道を走るのは難しいのである。

ここからは1本道。老兵は去るのみですので、みなさん、自由自在に走って行っちゃってください。というわけにもいかず、しんがりの九州の人に追われながら進むわけで。

昨日カブ夫を停めた丘の下のところにバイクを停める。丘の上まで上がるのはオフ車じゃなければ無理だろうってことで、勿論わたしは歩くことにし、今度は大阪キャンパーがカブ夫に乗り換える。神戸キャンパー、九州の人も歩きで丘を登ることにしたのだが、突然、九州の人が不思議な言葉を口にする。

「あがな繧ュ 繝\ 繝」繝ウ励謨\螟アと?」

同じ日本に住んでいながら、本気で何を言ってるかわからねえです。会ったばかりのコミュニケーション不足とかそういう問題じゃなく、耳が言語として理解できていない状態なのである。できる子期間はかくも短く終わっちゃうのか、と神戸キャンパーの方を見やると、彼女もわかっていない様子。九州の人にわかる言葉で言い直してもらったところによると、彼は

「あんな悪路を登らなきゃならないの?」

と言ったらしい。日本語って難しい。

“ばってん”は“but”など教わりながら、登頂成功。バイク3台並べて記念撮影したり、バイクに乗る3人が野人のように丘を駆け下りるのを眺めたりなどしていると、車でやってきたカップルが丘の上に登ってきた。なるほど、いい景色+人の少ない場所=格好のデート場所だよな。惜しむらくは、この場に邪魔なわたしたちがいることくらいである。恐らくこの場所のよさを満喫できないまま、カップルは早々に立ち去ってしまった。申し訳ないけど、運が悪かったと心の中でわたしたちを責め、次回にチャレンジしてください。

一通り思いつくことをし尽くしたので、遅めの昼ごはんを食べに(もう16時くらいなんだけど)内牧温泉に向かう。原付キャンパーとわたしは、国道沿いの川瀬食堂というところで、阿蘇の名物である団子汁(だごじる)&高菜飯定食を食べに向かう。他の4人は“あきない”という店であか牛丼を食べるとのこと。

川瀬食堂は、佇まいは国道沿いの昔からの食堂といった感じ。テーブルは座敷席のみで、壁にはいろいろなものが貼ってある。いろいろなものが。店員さんはおばあちゃん&おじいちゃんのみ。

原付キャンパーの勧めるまま、団子汁定食というものを頼んだのだが、これが異様に量が多い。どんぶりいっぱいの団子汁。団子汁は、具いっぱいの味噌汁にすいとんみたいなものが入ってるもの。つまり、これだけで主食・副菜・汁が取れちゃうような食べ物なのだ。しかも、この団子汁、中に玉子が2個も入ってる……さらに、うまい。それにプラスして、豆腐半丁、手羽先と野菜の炊いたのの小鉢、それに高菜めし。高菜めしもカレーライスかなにかを入れそうな底の深いお皿に、たんと盛られているのである。

山登りもする原付キャンパーは完食したのだが、わたしは高菜めしを丸々残して、おにぎりにして持ち帰ることにする。みんなにも食べてもらおう。ちなみに、おにぎり3個分の量があったことを申し添えておきます。

定食を食べ終えると、おばあちゃんがコーヒーを入れてくれ、帰り際にはアメまでくれるというフルコースぶりだった。

満腹ハラを抱えて、また内牧温泉に戻る。他の4人が入っているという田町温泉に着いたのだが、ここがまた、すごくレトロな感じの温泉……といか、公衆浴場。家と家の間に建てられた建物は、お湯が出ちゃったからちょっと建物建ててみました風である。戸をがらがらっと開けると、狭めの脱衣場に籠がいくつか。壁に近隣の人の名前が書いた札がかかっているのは、多分、温泉利用の定期かなにかを買った人の名前なんじゃなかろうか。なんというか、地域密着型って感じで、いいよなー。

中に入ると、四角い浴槽がぽつんとあるきり。男湯との仕切の壁には、昔っぽい看板がいくつもかけられている。入浴しているのは、おばあちゃんが大半。というか、おばあちゃんだけである。男湯の方は、どうやらキャンパーの人たちしか入っていないらしい。会話がよく聞こえることである。

お風呂から上がるとき、「お先に失礼します」と一声かけると、それに対応した返事が返ってきた。何と言っていたか忘れてしまったけれど、「温泉のご利用ありがとう」的な返事。みんながみんなにそう言っていたのが印象的で、ここは地域の温泉なんだなーとしみじみ感じさせられた。

キャンプ場に戻り、九州の人の友だちの九州の人もやってきて合計7人の夜になるのだが、最後の夜だなあと思うと、ちょっとしんみりしてしまう。これが終わったら家のベッドで眠れるけど、仕事も始まっちゃうわけで……。おまけに雨も降り出してきた。みんなで荷物や食べ物を静岡キャンパーの広げたタープの下に移動させて、こじんまりとした中でお酒を飲む。これもまた、しんみりだ。食材も余った食材の処分に入っているし。

夜も更けて。しんみりしつつトイレに行き、しんみりしつつ戻ってみたら……また、人が増えている。暗い中、じぃっと顔を見てみると、その人はなんと奈良キャンパーの人である。つーか、あんた、来るって言ってなかったじゃん。四国から散々メール送ったときだって、「行きたいなー。うらやましい」系の返事を返してきていたのに、一体全体、どういうことですか?

最後気分も吹き飛んで質問攻めにしたところによると、彼は奇襲攻撃を企てて、来ることはぐっと我慢して秘密にしていたのだとか。今日の午前4時には臼杵に着いていたのだが、なんやかやで到着が夜遅くになってしまったのだ。うわ……本気で騙された。原付キャンパーもこのくらいの秘密主義になると、奇襲攻撃が成功したかもしれない。見習うべきである。

今日の感想:騙された。