03/04/28 剣山スーパー林道

剣山スーパー林道攻め。

大体最後から1,2番目くらいに寝て、大体最初から1,2番目に起きるわたしは、今朝もすっきりと早起きである。昼間は暑いくらいだったのに、寒くてテントの隅の方で丸くなって眠ってしまった。予行演習を遙かに超える寒さってのは、ひどすぎる。

10:00 人より先にキャンプ場を出発。四国のメインの一つ剣山スーパー林道に向かう。ここはオフ車というバイクに乗っている人が走りに来るところで、曰く「オフローダーの聖地」なんだそうだ。「ライダーなら1度は走るべき」とどこかにも書いてあったので、ライダーたるわたしも1度は出向かねばなるまい。県道12号線、国道192号線とメーター振り切りで後発のオフ車キャンパー4人に追いつかれないように頑張って走り、道を間違えることもなく国道193号線に入る。ここから剣山スーパー林道の分岐点に当たる雲早トンネルに向かうわけだけれども、この勾配にすでにカブ夫殿はやられ気味。上りきれるんだろうか?

思わず指が入る標識? トイレに書かれた血文字のような193号線。
狭路ではあるけれど、県道4号線には負ける。
さすが、国道。

カブ夫さんの速度が落ちると、道の脇の様子がよく見えてくる。最初は「生えてるな」程度で済ませていられたのだけれども、こんなにたくさん生えていると……もう辛抱たまらんです。

綿を被った姿がうまそう カブ夫を路肩に停めて、袋を片手にレッツ★ぜんまい採り。
うひょうってくらいに大量であります。

うしゃうしゃ言いながら土手をよじ登ってぜんまいを採っていると、後から出発してきたキャンパーの人その1に追いつかれてしまった。

「何やってるの?」
「ぜんまい採りを、ちょっと」
「遅いんだから、先に行ってなくちゃ」

怒られました。

今度は真面目に、ぜんまいには見向きもせずに山道を上がる。2速をつかってよじ登り、分岐点雲早トンネルに到着する。この時点で合計4人。ほんとは昨日の初対面ライダーの人も来る筈だったのだけれど、途中で違う道を行ってしまい。しばらく待っても来ないので4人で出ることにする。とはいえ、他の2人が中型、1人が大型のバイクなので、原付カブ夫号とはペースが合うわけもなく、さらにはみなさんは林道経験者、わたしは舗装道路以外を走ったことがないという状態である。3人には先に行ってもらって、わたしは後から行くことにする。

ましな道でちょっと休憩 走るのは短めのトンネルから東側のコース。
この道を下っていくと、オフローダーさんたちが記念撮影をするスーパー林道の起点の碑があるのだ。
3人を追ってトンネルを抜けると、すでに3人の姿が小さくなっていき、エンジン音すら聞こえなくなる。
奴ら……奴ら、早すぎですよ。

なんでこんな5cmくらいの石ころがごろごろしている道をそんな速度で飛ばしていけますか?しかも、道の脇にはガードレールのようなものはないんですよ?転んだりしたら死んじゃうんですよ?……カブ夫タン、空の色が悲しいね。

時折、バイクの人とすれ違ったり追い抜かれたりするのだけれど、さすがオフローダーの聖地、みなさんオフ車とやらに乗り、顔の尖ったヘルメットを被り、ブーツにごつそうな服といういわゆる正装をしていらっしゃる。そんなところに、アノラック、軍手、ジェットヘルメット、ジーンズ、スニーカー、お買い物カゴ付きカブ夫号のわたしは、もしかしたら来ちゃいけない存在なんじゃなかろうか。山菜採り娘の分際でオフローダーのみなさんの聖地を汚してごめんなさい。申し訳なさを原動力に、2速全開でがくがく進む。ハンドル掴み続けて腕が痛くなってくるわ、ステップに踏ん張る膝が痛くなってくるわ、腰も痛くなってくるわで大変なことになりかけた頃、やっと舗装された道に出る。なんだ、東側ってもう終わり?大したことねえね。

ところが全長87.7kmを誇るスーパーな林道がこれで終わるわけもなく、今度はキャンパーの人その1を後ろに控えて走ることになる。普通の舗装された道&普通の砂利道なので、さっきよりも走りやすいっていえば走りやすいのだが、後ろに人がいると思うと、どうも焦ってしまう。

彼は単についてきているだけなんだろうけど、なんかいつもミラーに映られていると、煽られてる?という被害妄想が入っちゃいます。わたしが遅いのは明らかなんだからさ、後ろについていたら、せっかくの巡礼も台無しですよ。気にせずに俺の屍を越えて行っちゃってください。

カブ夫さんはどこ? 記念撮影ポイント到着。
手前がぜんまい採りを叱ったキャンパーその1。
真ん中が名古屋組。
奥がカブ夫先生。

起点に着いたらこのまま舗装道路を下って帰ると思ったのに、どうやら今来た道を戻るらしい。あの……わたし、もう、お腹いっぱいです。おうちに帰りたいです。そう言いたいところだけれど、嫌と言えない事なかれ主義のわたしがそんなことを口にできるわけでもなく、3人にまた先に行ってもらい、カブ夫に渇を入れつつ登り道を頑張る。舗装されてるのがほとんどだ。行け、カブ夫。

全力で走っていると、がつん、とポケットから何かが落下。やべえ。ポケットにデジカメ入れっ放しだった。ききっとカブ夫を停めて、急いでデジカメを拾いに走る。大丈夫かな。ちょっと形が歪んでるみたいなんだけど。まあ、いいか。

その後、帽子をカゴから飛ばし、ペットボトルを落とし、一瞬すべりそうになり死を覚悟しつつも転ばずに見晴らしのいい広場に辿り着く。キャンパーの人その1の他に、ごつい感じの人たちがこちらを見ている。異教徒ですみません。あまり見ないでください。恥ずかしがり屋さんなんすから。

名古屋組が先に行ってしまったとのことなので、またあの5cm石ごろごろを通り、分岐のトンネルまで煽られつつ走る。もう帰っぺね?と思うも、この辺のトイレはトンネルから西側にちょっと行ったファガスの森というところにしかないとのことなので、そこに向かうことになる。生理現象には勝てないし。また、あんな道を走るのか……。

今度は名古屋男子殿に煽られつつ走る。何人かとすれ違い、何人かに追い抜かれする内に、初対面キャンパーの人に追い抜かれる。バイクの種類はわからないけれど、多分、あのナンバーはそうだ。名古屋男子殿もそれをわかっていたので、彼もわたしの前に出て、すぐに見えなくなった。そうですよ、大きいバイクの人たちはお先に行ってくださいよ。

ファガスの森はトンネルから5km程入ったところにあった。駐車場と建物のついた施設で、聖地巡礼中のオフローダーの人たちが互いのバイクを眺めつつ、まったりと休むところらしい。そんなところに、ほんとうに申し訳ありません。

徳島のへそで黄昏ポーズ スーパー林道最高地点に行くのは諦めて、とりあえず看板の立っている“徳島のへそ”までやって来た。
いつの間にかぜんまいの袋も妙見山のお守りもなくなっているが、生き抜くのに必死でそれすら気がつかなかった。

トンネルからファガスの森までは5km程、ファガスの森からへそまではそんなに距離がない。あとちょっと、あとちょっと、とカブ夫の2速の底力に望みを託しつつ進み、トンネルに出る。あとは山を下るだけ。上りは非力ですが、下りは得意のカブ夫番長です。猛烈な勢いでカーブだってこなしちゃいますよ。帰りがけに寄る予定の温泉にだって、みんなからそう大差なく着くことだってできる。できるけど、辿り着いた温泉は残念ながら月曜定休。さ、次行くか。もうすぐ暗くなっちゃうし。

気を取り直して、また山道を下る。車1台分くらいの道幅は、車にとっては曲がるのも大変そうだけれど、対向車にさえ気をつければカブ夫にとっては充分に広い道だ。カーブミラーを凝視しつつ、4速でエンジンブレーキを最小限に抑えつつ走ると、すぐに前の車に追いついた。車間距離を取るのが苦手なので、加速しては減速、減速しては加速を繰り返す。すると、前の車が左ウィンカーを点けて道の端に寄って停まってしまう。もしかして、わたしは煽り走行とやらをしていたんでしょうか?原付ごときなんか気にせず行っちゃってくださいよ。それに、どちらかっていうと、前に車がいた方が対向車の有無を確認しやすくていいんですけど……。譲られてしまったものは仕方ない。頭を下げて前に出て、またしても全開走行で走り、第2候補の温泉に着く。

わたしの給油中にはぐれてしまった3人をキャンパーその1がカブ夫で迎えに行っているのを待つ間、温泉のおっちゃんと話をしてわかったことといえば、ここの温泉が四国で唯一毎日お湯を換えている温泉だということ。湯温は低めなので、廃材等を燃料にした大きな釜で沸かし直している。おっちゃんは石原慎太郎と知り合いであること。ついでにオランダ大使たちも知り合いらしい。更に言うと今まで無事故無違反で生きてきたらしい。おっちゃんについての情報ばっかりが増えていくけれど、おっちゃんのマシンガン・トークは止まりません。……みんな、早く来ねえかなあ。

俺とお前と大五郎 温泉後の買出し部長・黄嶋大五郎氏のお姿。
立派な地元カーって感じだ。

みなさんの後についてキャンプ場に戻る。別行動だったキャンパーの人が高知で魚を仕入れてきてくれていたので、カツオの刺身やらたたきやら鯛のあら汁やらを頂いて、生命の喜びに浸る。ほんと、生きて帰ってこられてよかった。

本日の失くしもの:ぜんまい、妙見山のお守り、時計の文字盤
本日の落しもの(回収できたもの):ペットボトル×2、デジカメ、帽子、心