03/04/26〜27 徳島県三野町
飛び出せ、海外
連休は遠乗りっすよ。と、走り出したら止まらない土曜の夜の天使カブ夫号は、夜の幹線ロード国道2号線を颯爽と駆け抜けているのであります。今回の遠出のために積まれたホームセンター・コーナンのオリジナルの箱が不安定感を醸し出しているけれど、そんなことはノー・プロブレムなのであります。とにもかくにも、ゴー・ウェスト。ニンニキニキニキ ニンニキニキニキの精神で行くのであります。
朝帰り後のあまり寝ていない妙なテンションで、普段なら絶対に通らない2号線を走る。夜22:30の出発ということもあり、昼間とは比にならないくらい車の数は少なくなっているけれど、真夜中になろうとしているのに神戸市内では人が結構歩いているし、車も走っている。都会だよな、神戸。なんかラーメン屋さんもいっぱいあるし。途中、事故った車を見たりしながら、神戸中心部を抜ける。垂水区の辺りになると、ちょっと様相も変わってきてさすがに人はいなくなる。

なんしか、あの時計の針の動きが日本で一番正確。
つまり、キング・オブ・時計がこの時計。
大きなのっぽの古時計なんかはおじいさんが死んじゃったらそれっきりだけれど、この時計はもう誰が死のうがチクタクチクタクですから。
2号線より走りやすいとツーリングマップルさんが仰るので、明石で250号線に入り、単調に道を走り続けて姫路近くに辿り着く。いわゆる丑三つ刻ってやつだけれど、未だ車は皆無というわけじゃないくらい走っている。いつもだったら、ちょっと不便でも車の少ない道を選んで走るので、なんだか違和感を感じてしまう。みなさん、こんな夜中にどちらへ向かわれるのでしょうか?
マップルによると、この辺りから250号線がバイパスになってしまうっぽいので、原動機付自転車であるところのカブ夫先生はバイパスを通らず、違う道を通らねばならない。カブ夫が通れない新御堂筋にしても、横に側道があるし、要は250号線の横をぴったりと走ればいいんじゃろ?

段々250号線の灯りが遠ざかるし、田んぼ道に突っ込みそうになってしまったので、引き返して……進んで……引き返してを繰り返す。
頭のよいわたしにはばっちりわかっちゃうのだが、これは嫌なパターンの始まりである。見切りをつけないと、恐らく朝まで行きつ戻りつを繰り返してしまうに違いない。250号線を諦めて、姫路市中心部に向かい、2号線を走ることにする。田んぼよりは街中だ。
姫路城(方面という看板)を見ながら観光気分に浸り、ひたすら岡山方面という案内標識を追う。街中ってこういう標識がたくさん出ているところが素敵だ。街灯もあるし、コンビニもある。オカヤマオカヤマと進んでいき……今度は2号線がバイパスになる。名古屋のときには知らずにいたから通れたけれど、駄目だとわかっているとバイパスには入れないし、なんだか高速道路の入口めいていて敷居が高すぎる。突破は無理だろう。泣く泣く闇雲に方向転換をする。
方向転換をして県道5号線に入り、出てきた標識を見ると179号線“龍野”方面と書いてある。龍野……山の方じゃん。一体、わたしはどこを走っているんだろう?これを行って恐ろしい遠回りをして岡山に入るべきか?今ならその案が魅力的に思えるくらい、捨て鉢な気持ちになっている。でも、山道。別な道を探せば、予定通りに進めるかもしれないし、進めないかもしれない。悩むことしばし、龍野はやめて別ルートを探すことにする。さっき、“網干”という表示が出ていたので、山方面から海方面に下っていけば、なんかルートが見つかるような気がする。網干って確かJRの行き先に出てくる駅名よな?ということは、JRの線路沿いに走れば岡山までは行ける筈。
--姫路市を2時間程うろうろしているのに、一向に出口が見えません。何度も何度も同じ道を通るけど、さっぱりわからない。改訂版を待って買ったツーリングマップルは縮尺が前バージョンよりも小さくなったため、細かい道の表示がないという糞仕様で、せっかく姫路市様が県道○号線という標識を立ててくださっているにも係わらず、マップルには載っていないという体たらくである。もう、うちに帰りたい……。けど、うちはどっちかわかんねえです。夜が明けたら、昭文社にクレームの電話だ。それにさ、そもそもなんで国道なのに通れない道路があるのさ。そんなにそんなにお車様が偉いんですか。
ひた走ってやっと250号線notバイパスに出る。うろうろした割には進んでいないというか、むしろ戻っている気がするが、気にせず進むことにする。まだ先は長い。岡山には4時くらいには着くかと思ったけど、この調子じゃ絶対無理。
遅れを取り戻すように、坂道も爆走して登る。箱が重たいせいか、あまりスピードが出ないながらも新聞配達お仕事カブもぶるるるーっと追い抜いて……失速?え?停止?そんなにまだ走ってないのに?さっき追い抜いたカブに抜かれ、ギアをニュートラルに入れ、とぼとぼと街灯の下までカブ夫を押し、シートを上げる。いつものガス欠です。なんでこんなときにするんかな。注意しようって思うだけは、思っていたのに。わたしの学習能力は、ダンゴ虫レベルに違いない。
この道を戻ってもガソリンスタンドはなかった筈なので、とりあえずは前向きに先に進むことを決意する。なんしか、バイパスもあった天下の国道である。ちょっと進めばスタンドぐらいある筈。アクセル全開はやめて、30km/hくらいで進む。辺りは真っ暗な道。進んでも進んでもなにもなし。時折“はりまシーサイドライン”という標識と海への展望らしき暗い空間が広がるくらい。昼間でガソリンたっぷりのときなら楽しいかもしれないけれど、今のわたしに必要なのはこれじゃないんですよ。
一峠越えた感じになったので、そろそろ街が来るかと期待するが、まだまだシーサイドラインは続く。灯りが見えても、船の灯りだったりするのがうらめしい。やっと発見した灯りの点いている店は釣具屋。駆け込んだらガソリン分けてくれるかな。そんな考えが一瞬頭をよぎるが、わたしもいい大人だし、そんな恥ずかしいことはできないよな。夜中に半泣きでガソリン乞いをするのは、恥ずかしさレベルで行くと、小学生が学校でトイレ(大)に入るくらい恥ずかしい行為である。駄目だ、そんなことはできねえ。
誤ったポイントで大人の自覚をしている内に、夜が白々と明けてきた。勿論、まだガソリンスタンドはない。洒落にならない状況でのガス欠だけは避けようと思ってきたのに、わたしの人生もここまでなんですよ、きっと。郷里のご両親様、娘は立派に人としての矜持を保ち、人生を全うしたいと考えております。シーサイドラインにガス欠で散った娘のことを忘れないでいてください。
人生をも諦めかけたわたしの目に分岐の標識が写る。まっすぐ行けば、そのままシーサイドライン。右に行けば相生駅&2号線。分岐点でエンジンを止め、糞仕様マップルで確認。250号もちょっと行けばガソリンスタンドはある。勿論、2号線にもある。250号の方が若干近いように見受けられるけれど、わたしの地図読み眼は信用ならない。駅方面に行けば街が形成されているから、地図に載っていないスタンドがある筈。しかも、ちょっと行けば交番もある。いつものパターンなら自分の進むべき道である250号線に進路を取るが、今回は交番ルートを通ることにする。万が一のときには、電車で帰ろう。カブ夫さんには悪いけれど、それも運命だ。許せ、カブ夫。わたしのためだ。
駅に向かっていく途中、スタンドがあるにはあったが、朝5時前では開いてる道理がなく、結局交番に着いてしまう。お巡りさん、ヘルプ・ミーですよ?今、相生署管内で3番目くらいに困っている一般市民がやって来ましたよ?と勢いよく飛び込んだのに、巡回中の札が空しくあるばかり。それは、今しなければならない巡回なのですか?
交番内に貼ってある地図を見ても、スタンドがどこかわからない。○○さんちがどこかなんて、そんなんはどうでもいいんですよ。大切なのはガソリンじゃろ?「ご用の方はこの番号を」という電話が鎮座しているが、こんなことで電話してもいいもんなんかな。こうやって悩んでいる内に白馬に乗ったお巡りさんが帰ってきて助けてくれないかな……。
「あのぅ、朝早くに申し訳ないんですが……」
結局、電話した。
24時間やってそうなガソリンスタンドはそうはないらしい。2号線を神戸側に戻るとある筈なんだけど……とお巡りさんも確信が持てない様子ながらも、いろいろと調べてくれる。すみません、ほんとうに。もう1人のお巡りさんが他の電話で応対している声が聞こえてくるのだが、その内容はなかなかにヘビーそうである。それと比べてこのわたしの質問のくだらなさと来たら、家が1軒建ちそうなくらいである。しかしながら、ここでぐっと引いてしまうと後が大変なので、「スタンドがなければ、兵庫県警のカブを貸し出せ。税金なら払う」心構えでもって話した結果、恐らく、その神戸側にちょっと戻った2号線のスタンドが開いているんではなかろうかとのこと。嘘だったら、税金は払わないからな。覚えておけよ。

スタンドですよ?
やってますよ?ビバ★兵庫県警。
行け、カブ夫。死ぬ気で突っ込め。
宇佐美鉱油のスタンドで、おっちゃんと会話しつつ給油。3.9l入る。つまり、ほんとうにやばい状態だったのである。おっちゃん2人組としばし会話する。やっぱり、予備用ボトルみたいなのを持った方がいいんかな。いいんだろうな。進歩のない人間がリザーブでも結構走れるということ知ってしまっては、今までの焦燥感も忘れて、今後はもっと恐ろしいことが起きそうな気がするし、きっとわたしならそのくらいのことはやるだろう。
コーヒーをご馳走になり、また元の道に戻る。250号線にあったスタンドはENEOSのスタンドで、24時間営業じゃないスタンドだった。わたしの判断力の正しさを褒め称えると共に、「給油はやっぱり宇佐美鉱油」と心に誓う。しかし、すげえよね、2号線方面を選んだわたしの判断力。サイコー。満タンになったら、ガス欠だったことすら忘れちゃうね。だから、毎回ガス欠になるんだけど。
