03/04/19 大阪府大阪市・東大阪市
from南港toでんぼ
3月初旬くらいに雪がちらついていたかと思いきや、ねいさん、大阪は先週末から夏の国になりました。
すぐに飽きちゃうと勿体ないから、という理由でおざなりに選ばれた厚手のスリーシーズン用寝袋では、これからは快適に過ごせない可能性が出てきたのですよ。暑くなってきても野宿する予定なんかなかったのだけれど、連休を間近に控え、更にはキャンパーの人たちのそれはそれは小さなシュラフなるものを見たりするとですね、こうむくむくっとマイ寝袋のでかさがわたしの心の物欲部を圧迫していき……新寝袋登場です。
旧寝袋も新寝袋も同じメーカーながら、でかさが大分違う。厚さも違う。っていうか、こんなぺらぺらな寝袋で、万が一寒かったりしたら、わたしは死んじゃったりしないんだろうか?連休明けの紙面を「無謀なキャンプ OLテントで孤独な凍死」といった見出しで飾るような親不孝だけはしたくないので、試睡眠をすることにする。さすがに自宅で床の上に銀マット敷いて寝袋にくるまるのは悲しすぎる。ということで、ベッドの上で寝袋を試すことにしたのだけれど、これもこれでどうかと思う寝方である。野宿の時は厚着をすることを見越して、極力薄着(Tシャツ&パンツ。大人なので全裸は自粛した)になり、レッツ★トライ。寝るべし。
爽やかに目覚めてしまいました。これはもう環境の問題でなく、わたしの睡眠の才能の賜物であると察せられます。
爽やかに目覚めたからには、爽やかに町中へと繰り出してみたい。目指すは大阪ベイサイド。南港辺りに突入した後、大阪市内に戻り、やたらとできすぎて有難味の薄れたスターバックスで朝ごはんなぞ食してみたい。カブ夫もデビュー6ヶ月を経て、都会の風に吹かれながら華麗にカフェ・レーサーとやらに転身なのである(ちょっと意味が違う。)。
が、中津まではさくっと着けるものの、梅田貨物駅付近で自分を見失い、思った方向に行けなくなる。右折を極力避けていくと、どうしても阪急インターナショナルホテル近辺に出てしまう。こんなところに用はねえ。仕方ないのでギアをニュートラルに入れて一旦エンジンを切り、横断歩道を渡って方向転換。ビバ★原付っていう一瞬だ。お車様にはできるまい。
なんとか軌道修正をし、なにわ筋に入り、ひたすら南下する。靭公園の辺りから、見慣れた道が出てくる。この辺りはわたしの図書館通いコースなのである。土日は山方面に行きたがるわたしではありますが、普段はこういった界隈をうろうろしているのですよ、カブ夫さん。
わたしの南限は難波までなので、そこから先は見知らぬ風景になる。偏見持ちを百も承知で言うならば、大阪市南部はデンジャーに満ち満ちているのだ。車で細かい路地に紛れ込むといつの間にか囲まれて身ぐるみ剥がれるとか、目が合ったら大阪港に沈められるとか、そんな類の話を大阪に来たてのうぶなわたしはたっぷりと聞かされてきたわけで、それらが血となり肉となり、想像は羽ばたきすぎていつの間にやら百鬼夜行の様相すら呈している。とにかく、恐ろしいところらしい。目。目を合わせたら沈んじゃう。
警戒しつつ、信号待ちのときにこっそりと地図を確認する。今いるのが芦原橋。この道をまっすぐ行けば、西成区津守。まっすぐ行けば……そう思って進んでいくと、まっすぐに向かう道が妙に細い十字路に出た。普通の人なら、左右どちらかの道を選ぶことを意図しているような道で、丁寧に右は梅南とかって書いてあるんですけど。でも、わたしはまっすぐ行かねばならないわけで……。どうする?カブ夫!?
前を行く原付がまっすぐに行ったので、後をついていくことにする。多分、あれが正しい道で、細く見えるのは今の内なのだ。きっと、進めば広い道になる筈。車1台が通れるくらいの道に突入し、自転車に乗るおばちゃんが道の真ん中を走っているのに注意しながら進む。ここはおばちゃんのテリトリーなのだから、わたしは遠慮しなければならないわけで。もしかしたら、おばちゃんは名うての当たり屋で、ふらっと来られてわたしの一生が終わってしまうかも……。今ヤ(殺)られちゃっても、わたしの保険金って300万円しか下りません。お父さん、お母さん、甲斐性なしの娘でごめんなさい。あなた方のかけて下さった時間と労力は水泡に帰すこと間違いなしです。
そんな心配は杞憂に終わり、大きな道にぶつかる交差点に出た。結局、ぐるっと迂回しただけに終わってしまった模様。やっぱり、この道は正しくなかったみたいだ。がらんと大きな道を進んで、橋を越え、ダンプに混じって南港に到着。

これも大阪に来たての頃に刷り込まれた(ニュースで見た)偏見的大阪風景の一つ。
海近くに放置される車は、どこに放置される車よりもうらぶれ感が増している。
南港に着いたら、次は大阪市内に戻る番である。何故、わざわざ南港まで来たのに、すぐに大阪市内に取って返すのか?そこには深い事情というものが存在するわけで、大人になればその辺はわかるってやつである。
今来た道を戻り、普段なら避けるであろう国道26号線(大阪市内の大きな道、御堂筋&四ツ橋筋に繋がる道)を選択する。この道だと、常に地下鉄と平行して走れるので都合がいいのだ。何故都合がいいのか?それも大人になればわかるってやつだ。
南港を出て30分程でスタバに到着。ちょっと離れたところにカブ夫を停め、チョコレートチャンク・スコーンとカフェ・アメリカーノで地図を見ながら朝食を取る。まだ9時ちょっと。次はどこに行くかな。大阪市内部分の地図を広げて検討していると、隣のゴミ箱の整理をしているスタバの店員ねえさんが話しかけてくる。
「ご旅行ですか?」
地図+休日の朝のスタバ=旅行者って図式なんだろうか。ねえさんは笑顔である。ここで、月〜金にいつもこの店の前を通ってますって答は多分正しくない筈。今、このわたしにできることはといえば、ねえさんの笑顔を絶やさないことである。そう、頑張れ、自分。
「はい。これからユニバーサル・スタジオに行くんで、友だちと駅で待ち合わせしてるんです」
完璧な答じゃね?ここまで嘘の設定を作る必要があったかどうかは別としてさ。USJは2周年がどうとかこうとかいう会話を交わして、そそくさとスタバを出る。しばらくはこの店の近辺を通るのは控えよう。
気を取り直してカブ夫に跨り、再び進む。中央大通りを右折して合流、ユニバーサル・スタジオとは反対側の東を目指す。いつも大阪車でごちゃごちゃしている中央大通りもまだ車が少なく、スムーズに流れて、中央環状線に合流する。

車の免許を取るときの路上教習も中環で、卒検では大阪ダンプに幅寄せされて危うく教官にブレーキを踏まれそうになった思い出の道。
元彼とどこかに行くのに必ず通った思い出の道。
そんな甘酸っぱい思い出でいっぱいの中環を通って目指すは、いくら可愛らしくおねだりしても連れて行ってもらえなかった石切神社=でんぼの神様である。
でんぼとは何か?
最近、専ら教育TVばかり見ているねいさんは、でんぼ=おじゃる丸に出てくる甲高い声で喋る虫と思うかもしれないが、それは大きな間違いである。「でんぼ」とは「できもの」のこと。ついでに言うと「めばちこ」は「ものもらい」のこと。おまけに「飴」は「アメちゃん」と呼ぶことを覚えておけば、大阪生活も安心である。多分。
とにもかくにも、彼女に「できものの神様のところに連れて行け」と言われた地元民であるところの元彼様が拒否する気持ちも、今となってみたらわからないでもない。そりゃ、嫌だわな。
石切駅を通り過ぎ、なだらかな坂を上がって石切神社の入口に到着する。駐輪場がどこかわからないので、とりあえず有料駐車場の入口に向かって行く。駐車場のおっちゃんに場所を訊こう。そう思っていたら、おっちゃんが駐車場小屋から飛び出してきた。
「ここは車の駐車場やないか。こっち来たらあかん!」
わからないから、今から訊こうと思ってたとこじゃんか!
間の悪いことに後ろに車がやって来た。邪魔にならないように斜めに後退するわたしに、おっちゃんは右手側の木の下辺りを指差し、あそこに駐輪するようにと指示を出す。でんぼビギナーにもわかるようにしておいてくださいよ、もう。


漢方薬系薬屋さんに占い屋さんがやたらに目立つ。
相談内容も離婚すべきか否かとか子どもの引きこもりなど、キャッチーな内容多し。

3番目って、何において3番目なんだろうか?
見たところ、どうってことない大仏だったんだが……。
普通、こういうところの商店街って駅から神社までの間に作るものだと思っていたんだけど、どうもでんぼは違うらしい。坂を上がって生駒山方面登山コースに向かって商店街が作られている。確かにお年よりは山好きが多いが、これはやりすぎじゃね?結構急な坂ですよ?そう思っている内に、どんどんお年よりが坂から下りてくる。もう、神社-商店街間を往復しちゃったですか?最近のお年よりはミラクルだ。

奴らは「ちょっとひと休み」でカメに負けたのである。
ここでひと休むとわたしも大変なことになるに違いない。
坂を上がり続けて行ったら謎は解明。なんてことはない。下にあった石切駅は近鉄東大阪線の新石切駅で、上にあるのが近鉄奈良線の石切駅。本町を通る地下鉄中央線から繋がる東大阪線よりも、難波から出て鶴橋を通る奈良線の方がぐっとメジャーなので、でんぼ参拝者も奈良線利用者が遥かに多い筈。となると、この商店街は奈良線石切駅から神社へ下るように作られていて、なるほど、尤もな作りであるわけで。

上之社神社にお参りしようと呼びかけているので、行ってみる。
名前の通り、上之社は奈良線石切駅よりも更に上にあるらしい。
坂、また坂を上る。大阪市内も近い場所だし、中環も近くて交通の便はよさげだけれど、この辺には絶対に住めないよな。カブ夫の力だと、2速……1速で上るのがやっとかも。そんな坂を毎日上り下りするなんて、軟弱者には考えつかない。
我慢しつつ坂を上がると、上之社神社に到着する。少々階段を上るようだけれど、今までの坂に比べたらなんてことない階段だ。いざ上がろうと階段を見上げると、ハイキング姿の夫婦っぽい人影が見えた。この人たちもここまで参ってきたなりね。下りてくるのをちょっと待ってみるが、下りてこない。2つの人影は定期的に見えては隠れする。何してるんだろう?……もしかして、怖い人たち?っていうか、人じゃない人だったら……。
近鉄奈良線生駒方面の怖い話があったよな。と、頭の中の怖い話データベースを探る。怖い話、もうやめようと思っていたのに。いらない記憶力が憎い。憎すぎる。
ここでずっと怖い話を反芻していても埒が明かないので、とりあえず階段を上る。夫婦は人だった。手に黒い数珠のようなものを持って、階段の上の小さな敷地をぐるぐる、ぐるぐる回っている人だった。何?夫婦山伏登場?--いや、お百度か。お百度って初めて見るんだけど、これって人に見られていいんだっけか?雨の降る夜中とかにひっそりとぐるぐるするイメージがあるんですけど……。

御礼亀なるものがたくさん沈んでいる御礼池があった。
カメ、ピンク色でちょっと可愛い。
購入したかったが、カメを売っている受付所が開いていなかったため断念。
さっきの商店街を下り、本殿に戻る。

上之社神社の夫婦に比べると、かなりカジュアルなお百度。
石の向かい側のところでおばちゃんが「お百度ひも」なるものを売っていたので、早速ゲット。100円也。わたしも1往復だけぐるっとする。カジュアルお百度は100回ぐるぐるしなくてもよく、何回でもいいらしい。あんまり回りすぎるとバターになっちゃうので要注意だ。本来ならお百度ひもに自分の名前・数え年を書き、石の間をぐるぐるしたら箱の中に入れるようだが、それを持ってカブ夫の元に戻る。

カブ夫は数え年1歳だった。
午後からは雨の予報なので、もう帰らねばならない時間である。ついでに思い出の外環も通って、さくっと進む。さようなら、東大阪。しばらくは来ることないだろう。多分。
そんなセンチメンタル気分を引きずりつつカブ夫を駐車場に停め、マンションに戻ってきたら……カ、カブ夫がマンションの駐輪場に戻ってきている!わけはなく、なんとライバル登場ですよ。同じマンションに、同じ黄色リトルカブ。自賠責のシールの4の字も目に新しい、ぴかぴかのニュー・フェイスってやつですよ。メータを見ると、まだ191km。1,2回乗ったか乗らないかくらいじゃないですか。若い子の魅力に参りそうになるので、カブ夫の優れたところを思い浮かべてぐっと堪える。この黄山カブ之新が3速セルなしなら、カブ夫先輩は4速セル付きだもんね。カブ之新は後で先輩の元に挨拶に来るように。