2002/11/02 和歌山県本宮町・川湯キャンプ
ザ・ロンゲストデイ
近くのファミリーキャンプの人が、わたしのテントの前で犬を躾けている声で目が覚める。あうー。そんなバカ犬熊野川に流してしまえ。
更なる連泊を勧められているけれど、そうすると際限なくなりそうなので、出ることにする。荷物まとめるのって難しい。地面が湿っていたせいか、はたまたわたしが大量に水蒸気を発したのか、フライシートの内側がびしょびしょである。
川沿いをぐーっと南下して新宮市に出る予定。風を受けながら走る。天気がいいせいか、それとも連休に入ったからなのか、来るときに比べると格段に車の数が増えている。そういや来るときはバイクになんか会わなかったけれど、バイクにもばんばん追い抜かれる。集団でツーリングをしていると思しきバイクの人たちがわたしを抜いていくのだが、十数台に一気に抜かれると、神経使ってちょっと怖い。ミラーを見ながら、まだ来る、まだ来んの?まだ来ますか?という気分になる。うー。1人で走れ。

市街地だ。
なんだか街全体が檜のような、製材所の匂いに包まれているように思えるのは、気のせいなんだろうか?
わかりやすい道を通って、熊野速玉神社に向かう。
ついでなので、熊野三山巡りをしちゃう心づもりなのだ。
さらに新宮といえば、桃鉄でもあるように「目はりずし」が有名である。目はりずし--本場新宮で食べようと思って、途中売っているお店があっても無視し続けてきた憧れの一品。絶対喰う。意気込んで街の中を徘徊して、おばちゃんに道まで聞いたのに、目はりずし屋さんを見つけることができなかった。諦めて先に進む。途中道沿いにジャスコを発見したので、寄ってみる。地元の名産品くらい売ってるじゃろ?←売ってなかったので、サンマ寿司を購入。
段々感覚がおかしくなってきていたので、サンマ寿司を駐輪場に停めたカブ夫の上で食べちゃおうかなーと戻ってきたところで、大きいバイクの人に声をかけられる。キャンパーズネーム女子のお仲間の男子殿だ。なんでも腕をぶよに刺されてものすごく腫れてしまったので、これから病院に行くとのこと。虫さされで腫れるのって、すごく痛いもんな。女子殿も店から出てきたので、会話をして、また別れる。こんなところで会うなんて偶然というか、向かう先ってみんな一緒なのかしらん?
これからは熊野三山巡りの〆・那智の滝&太地町でくじらのベーコンをゲットするという仕事が待っている。張り切って42号線を進んで行くも、太地町への分岐点の観光バスの混雑っぷりを見て気力が萎える。まあ、那智の滝があるさ。

おかあさん、末娘は幹線道路沿いに坐って昼ごはんを食べられるような女になってしまいました。
ところで、どうして「黒潮」ってどことなく美味しそうに響くんだろう?

観光地観光地してるな。
寄らないとこうかな、と思うが、先ほどのサンマ寿司で胃腸が動き出したせいか、リトル腹が痛い。いや、結構痛い。我慢利かないかも。数台停まっている大きいバイクの横にカブ夫を停める。ここからトイレって距離あるじゃん。
無事にトイレに辿り着き、ほっとした後、携帯の電源を入れてメールチェック。
志摩半島を見てくるといいよ。
てこね鮨や魚がうまい。
By義兄
魚人間義兄さんめ。志摩半島まで行ったら、火曜日の仕事に間に合わないじゃんか。にやりとさせてもらって、また先を急ぐ。地図で確認したところによると、実は那智の滝はとうに過ぎてしまっていたらしい。あの太地町の辺りがターニングポイントだったみたい。
熊野三山は熊野二山に割愛させて頂き、当初予定していた野営地・串本町潮岬の入口のところで信号待ちをしていると、後ろから大きなバイクがやってきた。迫ってくる大きなバイク。やっぱりわたしが前にいると、邪魔だよな。バイクの人って、信号変わったら猛烈ダッシュするもんな。避ける気があるってことをハンドルを切って示すのだけれど、何故だかバイクは迫ってくる。青になってさっさと前に行くのかと思いきや、大きいバイクの人はわたしの横に並ぶ、何?なんかした?ぼこぼこにされちゃう?
「おれ、川湯であった○○」
大きなバイクの人が言うので横を見ると、確かに昨日川湯温泉で会った人だった。そういえば、紀伊半島一周するって言ってたっけ。
「一周中ですか?」
「うん」
手を振り合って、彼は潮岬方面へ、わたしはそのまま42号線へと別れる。いろいろ会うな、ほんと。
42号線を走っていると、一人ツーリング中っぽいバイクの人にすれ違ったり、追い越されたりする。対向車線の人から見ると、お買い物カゴ付きのカブ夫は単なる地元車に見えるのだろうけど、後ろから追い越す人からすると、荷物満載の荷台with輝く銀マット&大阪ナンバーってことでツーリング中とわかるみたいで、追い越し様に左手を挙げたりして、いわゆるライダー同士の挨拶をされるようになってきた。勿論、マニュアル大好きッ子のわたしはこの挨拶の存在は知っていたのだが、実際に自分がされるとは思っていなかったので、すごく嬉しい気持ちで左手をぶんぶん振ってしまった。まさに犬が尻尾ちぎれんばかりに振るような勢いで。後で考えると恥ずかしいんだけど。
那智の滝&くじらのベーコンという二大仕事をやりそびれてしまったので、龍神温泉にでも行って、その近くで野営でもしようかと方針を変えてみる。野営地がなければ、高野龍神スカイラインで大阪帰っちゃえばいいし←後で甘い考えと知ることになる。

311号線っていうと、昨日湯峰温泉に行ったときに通った道に繋がっている。
このまま行っちゃうと、川湯に戻れるということか。
こんなに進んできたのに、なんか変なの。
高野龍神スカイライン辺りには給油ポイントがあまりないと関西ツーリングマップルが仰るので、さっさと給油。荷物が重たくてスタンドを立てるのに一苦労だが、2.6l入った。ちょうどいい頃合いだったかも。
それから、延々と山道を進む。龍神村って、遠い。大阪から車で連れてきてもらったときも遠いとは思ったけれど、来た方角や手段は違えど自分で運転するとなおさらにそう感じさせられる。龍神村に入ったら入ったで、龍神温泉がまた遠い。少し目星をつけておいたオートキャンプ場も、龍神温泉から12,3km離れているので、断念する。今日はもう帰っちゃおう。温泉浸かって、温まればなんとかなるじゃろ?(甘い考えである)
山を登る+夕方4時=段々寒くなってくる。がたがた言いながら龍神温泉に着く頃には、かなり薄暗くなっていた上、ひどい混みっぷりで、狭い道を車がすれ違おうと右往左往している。--来て失敗だったかも。
車は駐車場がなくて困るようだけど、そこは原付の強み。前のバイクの人が停めていた公衆トイレの入口付近にカブ夫を停めて、温泉へ。何年か前に来たときには、すごくひなびた感じの木でできた露天風呂があるだけだったのだが、なんだか妙に立派な建物ができている。なんか、なんかだ。いろいろと麻痺しているわたしはさっさと服を脱いで、中に入る。きちんと内湯があって、その外に露天風呂があるという形になっている。試しに露天風呂の方に行ってみたら、狭い風呂にきゅうきゅう人が詰め込まれていて、興ざめ。内湯のガラスから外を眺めるだけでいいや。どうせ薄暗いし。
温もって外に出ると、すっかり日が暮れて、かつ、雨。え?お話が見えないんですけど?わたしが長距離走ろうとすると、雨ですか?もしかして、雨女認定試験でも行いたいのですか?
待っても止みそうにない雨なので、カブ夫の荷物を降ろし、ゴミ袋で包む。行きも帰りもゴミ袋&長靴か。荷物が結構濡れているので、多分、わたしがお風呂に入った頃から降っていたような感じ。長靴を履いたりなんだりしていると、龍神温泉の人がトイレ掃除を始めだした。確かに、確かにね、公衆トイレの入口付近で荷物広げてるわたしが悪いですけど、水まきながらデッキブラシ使うのをあと10分くらい待っていただけないんでしょうか?一握りの善意を所望致したい。駄目?いいです。二度と来ねえや。こんなとこ。混んでるしさ、遠いしさ、来れねえよ。
右眼だけコンタクトでは夜道は怖いし、目がしょぼしょぼしてきたので眼鏡に切り替え、水滴付けつつレッツ出発。雨なんで、高野龍神スカイラインは止めにして、御坊まで下りて42号線で帰ろうっと。(ちなみに高野龍神スカイランはチェーン規制が出ていたとか。そんな状況下で自分が運転できるとは、到底思えない。)
来るときはまだ日の光があったので気がつかなかったが、この辺の道に街灯なるものは存在しないらしい。まだ、そう、まだ6時だというのに、夜中のような暗さ&静けさなのである。わたし、帰れるのかな……。でも、この辺で力尽きちゃったら、ムジナとか悪い動物が出てきそうだしな……。弱気で進もうが、なにで進もうが暗いものは暗いし、雨が降っているものは降っているのである。とろとろと進むと、たまに白いものがふわっと目の前を漂う。前の車の排気ガスの名残?←1日目の夜に来た人が言っていた、「霧」だった。
その内に雨は止んだけれど、暗い道と時折出てくる霧には変わりなく、おまけに和歌山市までは110km、御坊市までは50km程。昼間だったらこの424号線を使って直で和歌山まで行ってもよさそうだけれど、こんな道なら絶対御坊まで行って街灯があるであろう道を走った方がいい筈。なせばなるなる、なさねばならぬ、とわけのわからないこととつぶやいてみる。熊野大社のおっちゃん、公共工事は大事ですね。
そんなビバ★公共工事な気持ちになったのも束の間、この山道にも公共工事の波は押し寄せているらしく、時折片側一車線通行の信号が現れるのである。信号があるということは、赤になるときもあるわけで。ただでさえ、暗い車通りの少ない道で、赤信号待ち2分40秒なんかをさせられるとね、暗さと寂しさがじわぁーっと押し寄せてくるのですよ。どうやらカブ夫殿は停止すると、ライトが薄暗くなるようにできているらしいのですよ。今まで気づかなかったよ、ママン。なんしか昼間or明るい夜道しか走ったことないし。川と山に囲まれて、1人きりの薄暗い中をじっとカウントダウンしていると、怖い話が甦ってくるのですよ。具体的な話は浮かばないけれど、とりあえず怖い。暗闇ってのは、怖さの根源と直結するスイッチを持っているようだ。怖いから、目の前の数字のことだけを考える。まだ8時くらいだっていうのに。ああ、もう山め、ファック★ユウじゃ。やっと青になった頃、後続車が来る。お前、もっと早く来い。遅刻はここで居残りしてろ。
御坊までの長い道のりを終え、やっと42号線に入る。会社の若い人(年上)が言うには、42号線は「死に号線」といって、死亡事故なんかが多い路線なんだそうである。が、今のわたしには死亡事故が多かろうが少なかろうが、街灯がありさえすれば天国である。おまけに前後右に車がいっぱい。1人じゃないって、素敵なことだ。
ひた走り続けて、和歌山市に入る。和歌山市で驚いたのが、二輪車用の停止線と四輪車用の停止線があるということ。不器用な女ですから、そんなに前には出たくないんですけど。仕方ないので前に出る。
傾いた荷物を直しながら停車していると、隣に並んだ若者が2人乗っている車の窓が開き始めた。そうか、山道が終わると、今度は若者がたくさんいる世界なのか。切れる若者とかだったらどうしよう。窓から出した手にナイフとか握られていたりして、哀れなわたしはヤられてヤられちゃうに違いない。という心配をよそに、わたしよりも先に発車したその車の助手席から手が伸びてきて、若者車は手を振りながら行ってしまった。手か……手ぐらい……手ぐらいどんどん振りますですよ。ぶんぶん振ってわたしも応える。
ライトアップされた和歌山城を見て、孝子峠を越え、憧れの大阪府へ。おかあさん、大阪まで帰ってきましたよ。10時過ぎくらいにはなっているものの、やはり大都会大阪、普通に人が歩いているし、車も走ってるし、路駐もたくさん。冴えてるなあ。街灯も看板の灯りも、お店の灯りもある。おまけにローソンだらけ。週刊ローソン、うっ!なんてCMで言ってる、あのけったいな青人形ですら愛せそうな気分。
余裕が出てきたので、例え若者4人が乗り合わせている軽に
「なあ、旭川ラーメンってどこにあるか知ってる?」
と訊かれても、こんなテント背負ってる奴が知ってると思うんか、という気持ちは表に出さずに
「知らんわ。ごめんな」
という返事を笑顔でできるようにもなるってもんです。ちなみにこの若者殿は、カブ夫のバランスを見るのにきょろきょろしていたわたしに、「故障?」と訊いてくれる優しさもございました。いいね、大阪。
ほんとはそのまま一気に大阪北部の自宅まで帰るつもりが、信号で止まる=カブ夫のエンジンが止まるようになったため、ガソリンスタンドへ。セルフのスタンドがあったけれど、お釣りのプリペイドカードは門真のあのスタンドのだけで充分。人のいる普通のスタンドで補給したところ、3.6l入りました。カブ夫、やばかったのかも。
その後は順調に進んで大阪市に入り、難波から四つ橋筋に入ると、そこはいつもの見慣れた風景。11時半過ぎだというのに、さらに人がいっぱい。素敵すぎる、大阪市。磯村市長様のおかげですよ。
結局、9時過ぎに和歌山県本宮町を出発して、紀伊半島を2/3周&大阪府ほぼ縦断して、360km程を一気に走破。自宅に着いたのは12時半くらいとなる旅でした。カブ夫さん、お疲れさまでした。来週は1000km点検だ(300km程超えてるけど)。