2002/11/01 和歌山県本宮町・川湯キャンプ

初キャンプだほいin紀伊半島。

ずっと50〜60%と言われていた降水確率が、前日になって90%に跳ね上がった。雨決定である。起きてみたら、やはり雨。激しくはないけれど、本格的。

なにやらなにやらなカブ夫 昼過ぎて止んでから行こうかなー、やめようかなーと迷いもするも、このために有給を取ったので、前日購入したカッパのずぼんを履き、テントやらいろんなものをごみ袋で包んで6時ちょっと前に自宅出発。

ヘルメットのシールドを閉じると前が見づらいので、雨を顔に受けながら走る。163号線に入って、紆余曲折して168号線に入るというルートだった筈が、間違えて1号線に入り、慌てて引き返す。やべえ。東京まで行っちゃうとこだった。

軌道修正して、無事168号線に入る。奈良辺りでそろそろ通勤の時間帯になってきた模様。車が増えてくるのを見ては、「愚民ども、働きなさい」と心の中で言ってみたりする。なんしかわたくしは、今日から四連休でしてよ?という変な優越感に浸るのだけれど、よぅく考えたら、雨の中原付で野営しに行くわたしの方が愚民だったりする。これが晴れてならなー。

奈良県王子町の川沿いで、また道を悩む。目の前を横切るこの道路って何よ?つーか、わたしが走ってきたこの川沿いの道って何?なんで川ってそうころころ名前を変えるわけ?地図を開いて悩むことしばし。しかし、そうやっていても本が濡れるだけで埒が明かないので適当に進んでいくと、なにかわからない内にまた168号線に出た。

安心すると、カッパの裾から出たジーンズや靴下、スニーカーがびしょびしょという現状が実に心に迫ってくる。完璧だって思ったのに、どうしてこんな肝心なところが抜けてしまうのでしょうか?仕方ないのでホームセンターを探しながら走るが、まだ時間が早く開いていない。もっと早くから働けよ、愚民どもめ。

奈良県五條市に入って、やっと開いているホームセンター(ジュンテンドー)を発見。おじいちゃんの運転する軽トラックが出たり入ったりしている。ここならわたしの求めているものがあるに違いない。と、カブ夫を停め、入口付近のコーナーで充分に目的の品を吟味する。更に中に進み、おじちゃん靴下5足セットとビニル手袋を手に取り、入口で見定めた長靴を持ってレジへゴー。レジでは渋めに「履いていくんで、タグ取ってください」と決めてみたが、レジ嬢には通じただろうか?not水洗トイレで濡れた靴下を履き替え、長靴を履き、ヘルメットから出て濡れた髪の毛をまとめて上着の中に入れる。

気を取り直して、再出発。いつもスニーカーで乗っていたので、長靴でのギアチェンジがなんとも変な感じ。時折、前のペダルと後ろのペダルの間にかぽっと靴が挟まってしまう。気をつけよう。

そういえば、わたし、すでに道の駅を2つくらい通過している筈なんだけど、それらしきものって全然見てないよな。また、道間違えてんのかな。と、疑問に思いつつ走る山道。この山道に入ったときから、○○キャンプ場あと35kmとか○○温泉あと40kmという標識を目にするようになった。そんなあと何十kmって標識を立てるやつがあるかい?と心の中で突っ込みを入れていたのだが、ほぼ1km間隔であるこの標識が心の励みになったりする。遅々として進んでいないようで、進んでいるんだな、と。

霧に霞む山 走っている車も少ないのだけれど、一応登坂車線に移り2速で登りきると、おっちゃんが写真を撮っていた。
晴れてたら、気軽にカブ夫を停めてたくさん写真を撮る予定だったんだけどな。

ビニル袋+鞄の中のカメラを取り出すのって、すごく面倒くさい。軍手やビニル手袋も外さなきゃならないし。今度出かけるときは、デジカメにヒモつけて首から下げておこうと密かに決意する。雨の日は面倒だらけだ。

おざなりに写真を撮って、また進む。富有柿の露店が出ているのがなんとも奈良らしいが、財布を出すのが面倒だし、載せられる場所もないので素通りするのみ。前回の雨の山道を思わせるような道を慎重に走りながら、点在する民家を見てふと思う。

この辺に住んでる人たちって、どうしてこの辺って思ったんだろう?

わたしは基本的に海ッ子なので、住むところ=平野というイメージが強いのである。山、好きだけど、住もうって発想はないよな。毎日毎日登って下っては大変そうだ。

いくつかの集落を抜け(当然雨)、日本最大の吊り橋・谷瀬の吊り橋を一瞬渡りかけるも、雨&駐車料金100円の表示を見て断念し、日本最大の村・十津川村に入る。ここから目指す和歌山県本宮町は隣町ですぐな筈(地図上では)。十津川村がどのくらい「最大」なのかによるけど(関西ツーリングマップルによると、「奈良県全土の5分の1を占める」だそうだ)。

--最大はなめちゃいけない。行けども行けども十津川村は続くのである。どのくらい続くかというと、雨降り模様の天気が晴れに変わり、地面が乾いてしまうくらい続くのである。山・川・製材所の繰り返し。製材所っていいよなー。おがくずが出てるとことか。木の匂いたっぷりで。

紀伊半島は温泉が至るところで湧きまくっていて、勿論、十津川村にも温泉はある。キャッチフレーズは「遠いところだから、温かい」。確かに遠い。きっと温かいことだろう。でも、遠すぎるのも考えものだと思いませんかね?

雨は止んだはいいが、川沿いの道は思った以上に風が強い。非力なカブ夫に表面積の広いわたし&野営道具が載っているので、どうしてもふらふらしてしまう。肩やら足やら手やらに力を入れまくって、14時、やっとのことで川湯温泉野営場に到着。

これからが野営本番!とばかりに意気込んで、無人の受付に声をかけるも人の姿はなし。きょろきょろしても誰もいないし、お客さんらしき人も見当たらない。ふむぅ。そのまま中に入っちゃおうかなー、と進んでみようとすると、「管理人が来るまで駐車場でお待ちください。無断でキャンプした人からは前泊分頂きます」の看板が行く手を阻む。初キャンプでこれは嫌だよな。キャンプの作法をもっと学んでくればよかった。海ッ子であるところのわたしは、マニュアル大好きッ子でもあるのだ。こんなときはどうするのが一番理に適っているんだろうか?検索……Googleで検索かけてえ……。

30分程待っても変化がないので、受付に貼ってあるポスターの電話番号に電話。携帯って便利だにゃー。聞いてみると、その内管理人が参りますので、キャンプしておいてくださいとのこと。なんだ。早く言え。待ちぼうけするところだったじゃんか。

中に進んでいくと、大きいバイクが1台停まっていて、テントが1つ建てられている。先客だ…。しかも、女の人の1人キャンプだ。これで1人ぼっちの寂しいキャンプ場の可能性もなくなれば、先客に犯(ヤ)られて殺(ヤ)られちゃうって可能性もなくなったよな。内心のびくつき感を悟られないように荷物を降ろしてきょろきょろした後、挨拶を交わす。これ山男の基本なり。

本日の宿 テントを建てるのは3回目で、勿論、戸外では初めて。
ペグとやらを使用するのも初めてなんだけど、戸惑いは悟られないようにと余裕の風格を漂わせつつも、一心不乱にテントを建てる。

フライシートってやつをかけるの、よくわからないんだよなー、と悩んでいると、いつのまにか女の人が近くに来ていた。

聞くところによると、彼女も初1人キャンプらしい。昨夜から泊まっていたが、昨夜はまるっきりの1人だったらしい。すごすぎる。後から仲間が来るので、夜お話を一緒に……とのお誘いを受ける。このときのわたしの予想する「お話」は、女の子何人かの戸外パジャマパーティ程度のものである。たき火でマシュマロとか焼くのかにゃ?みんなに告白すべき好きな人の名前でもでっち上げねば。

テントを無事に建て終えた後、アネにメールを送る。カブ夫を購入してしまったというのが心苦しくて言い出せないでいたのだが、こんな面白い話をアネにしないではいられないし、黙っているという事実がまた心苦しいし。それにここでなんかあったとき、家族に説明がつかないし。よく1ヶ月も黙っていられたよな。

告白します。
旅に出ました。(略)

1000人入っても… その後、濡れた髪や冷えた体をなんとかすべく、公衆浴場に向かう。
ここの温泉地の売りは1000人入れる露天の仙人風呂だけれど、午前中の雨降りでいくと湯温が低くて入れないだろうと水着を持ってきていないのだ。

公衆浴場200円也。充分に温まって、戸外パジャマパーティーに備えて差し入れでも買いに行こうとカブ夫に喝を入れていると、公衆浴場のおっちゃんがやってきた。

「大阪から来たんかいな」

おっちゃんは若かりし頃、うちの隣の市に住んでいたらしく、その辺のことを懐かしみながらぷかりぷかりと煙草を喫う。吸殻は川に投げられてしまうが、地元の人のやることだから、きっとこれが正しい作法に違いない。昔は道路も発達していなかったから、川を下って南下してから電車で大阪に行ったこと、昔陸上をやっていたこと、諸々の話をしてる内に「温泉掘ってるとこ見るか?」と誘われ、カブ夫をずりずりと押してちょっとだけ上流の温泉掘り現場におっちゃんと向かう。買出しへは、いつ……?

川縁で掘られているという温泉は、ほんとに狭い敷地の中で作業が進められていて、作業員2人の人がボーリングの機械を支えてなにやらやっていると、その横からお湯が飛び出ているといった具合。ぷしゅーっぷしゅーってな感じに川にお湯が飛び出て注ぎこまれている。この湯量が安定していたら、温泉として利用するそうだ。

おっちゃんが知り合いのおっちゃんを見つけて話をしだしたので、お礼を述べて買出しに向かう。うん。おっちゃんの話は長かった。

柿と牛乳を買って戻ると、最初にいた女の人のお友だちがすでに来てテントを建てていた。2人とも名古屋方面から来ているのだけれど、知り合ったきっかけは北海道で出会った友だちに紹介されてとのこと。ん?ライダー+北海道?

マニュアル大好きッ子のわたしの賢明なる事前調査によると、北海道好きライダーの人というのは、キャンプだほいほいほーいの人たちということなのである。野宿とかがんがんしまくって、無料のキャンプ場に住み着いた挙げ句郵便がそこに届いちゃったりして、見知らぬ人と出会って旅しちゃったり、住所交換しちゃったり、キャンパーズネームで呼び合っちゃったり、桃岩荘についてあつぅく語っちゃたりするのである(含・誤った認識)。戸外パジャマパーティっていう想像は、大きく間違ってるってことじゃ…?

あと2人来るという予定のお仲間の内の1人が到着、テントを建て終えた後から、ごはんの準備が始まる。後から着いたこの男子殿はわたしと同じく大阪から来たのだけれど、わたしが7時間かけてきた道を、この日が暮れてからというのに休憩込みで3時間半でやってきたらしい。ライダー、すごすぎる。わたしなんか休憩なしだったのに。

本場名古屋の人が作る晩ごはん 名古屋名物味噌煮込みうどんを作ってもらっていると、上着に穴の開いた男の人が道具を抱えてやってきた。彼曰く、日本一周の帰り道だとか。
--にほんいっしゅう?
驚くわたしを尻目に他の4人は普通に、「○○って知ってる?」「○○にいなかった?」等の話を和やかに進めているのである。
恐るべし。
これが普通なのか?なのか?
日本一周って聞いたらびっくりしね?

少しすると、また箱を抱えた男の人がやってきた。この人が仲間の人?……彼も初対面の人らしい。やはり普通にそれぞれが作ったごはんやビールを分け合いながら、お話が進むのだけれど、なんていうか、今までの自分の世界にはなかった世界だよにゃー。この人見知りのしなさというか分け隔てのなさって何なんだろう?すんなりと他人を受け入れることのできる柔軟さって、わたしにはないもんだよな。最初の探りみたいなものがないっていうか。共通項はバイクでキャンプしてるということだけなのだが、これが必要十分条件みたいだ。なんて垣根の低い。

食材も残り少なくなってきた夜9時、やっと最後のお仲間男子殿が登場。

「そこでちょっと1人の女の子に声かけてきたから。呼んでき」

もう、驚きません。

バイクを停めている女子殿のところに向かう。彼女は埼玉からずぅっと15時間ほど走ってきたという。15時間。埼玉から。和歌山まで。

ヘルメットを取って、彼女曰く
「キャンパーズネーム○○と申します」

……もう、驚きません……。

その後、最初の女子2人と、最初の男子1人と川湯へ向かう。11時を過ぎていたので仙人風呂はすでに閉まっていたため、もう一つの真っ暗な露天風呂に入る。熱い。でも、いい感じ。真っ暗なので星がよく見える。あまりに小さな星まで見えるので、オリオン座がどれか判断がつきかねたくらい。うちから見えるオリオン座なんて、四隅の星と真ん中の3つ星くらいしか見えないもの。

一気にいろんな経験を積み重ねて(更にはアネからの驚きの電話も頂戴し)、就寝。ほんといろいろ。

反省点:カッパ着ても長靴履かなきゃ意味がない。
特筆点:北海道系ライダーはすごい。ごはんがうまい。