03/05/25 京都府京都市・福井県名田庄村

そうだ 京都。

「そうだ 京都、行こう」
って言われたら
そうか 京都、行くか
っていう気持ちになっちゃうよにゃー。秀逸なコピーですよね、JR東海さん。ただ、実際に行くかどうかは別問題なわけで、わたしの脳内では“京都=人いっぱい”ニューロンが強化されている。つまり、脳内京都はいつも祇園祭状態なため、人の波にもまれる覚悟がないとなかなか行けない場所でもあるわけで。

しかしながら、今日のわたくしは一味違います。

違いポイント1:金曜日にカブ夫の定期点検&オイル交換をしたので、絶好調。
違いポイント2:新しいヘルメット購入のため、宇宙人になって絶好調。
違いポイント3:実は中免の卒検合格で絶好調。

宇宙人的には京都の混雑なんて平気っすよ。なんだったら、朝5:30に起きて、6:30には出発しちゃいますよ。と、わけのわからない高揚感に背中を押され、起床&出発するのでありました。ちなみに天気は昨日と打って変わっての曇り空。暑さ対策のため、アノラックの下は半袖なのだけれど、それもすでに失敗の予感すら致しますです。

燃料計によると、現在カブ夫さん内部には半分程ガソリンが残っている模様。しかしながら、今日のわたしは一味違うのである。ガス欠の憂き目に遭わないことを今回の目標と定め、171号線のスタンドで給油を試みる作戦なり。さすがなのだ。

ききっと給油機の前にカブ夫を停めると、店員さんがやって来る。急いで1速に入れ、鍵を抜いて立ち上がり、シートを上げながら先手必勝。
「レギュラー、満タンでお願いします」
なかなかガソリンコックが開かないけれど、それには目をつむってもいいくらいの手際の良さじゃないですかね。
「初めてですか?こちらはセルフになるんですけど、使い方、わかりますか?」

--宇宙人、ショボンです。

「教えてください」
給油機にお金を入れて、ガソリンの種類を選び、給油する。レバーを元の位置に戻すと、レシートが出てくる。そのレシートをバーコードに読ませると、お釣りが出てくる。地球文明って、すげえね。感動に打ち震える宇宙人に、更に店員さんの駄目押し。なんと今はキャンペーン中で、給油したお客様に箱ティシューをくださるらしいのですよ。うひょう、箱ティシュー!2l給油の客にまであげたら、絶対損じゃね?ありがたい。ありがたいけど、これ持って京都に行くのか。

箱ティシューをカゴに入れ、イナイチを爆走。一路京都へ。イナイチをずぅっと行って油小路という交差点を左折すると堀川通に出る筈なんだが、気がつけばイナイチは行き止まり。……ふむぅ。地球の磁場かなにかが、わたしの道判断能力に影響を及ぼしているに違いない。ちょうどいいところにあった9号線の看板が“堀川五条”方面を示しているので、そこを進むことにする。要は着けばいいんですよ。え?着けばいいんじゃろ?文句のある奴は一歩前に出て、後ろ手組んで歯食いしばりやがれ。

朝の8時ちょっとだというのに、すでに観光バスや観光客は動き出している模様。今の時間でこれなら、お昼頃の混雑ぶりは推して測るべしだ。堀川通沿いの二条城を(横目でちらりと)見学し、賀茂川沿いを通り、柊野別れという雅な名前の交差点を過ぎ、ひた走る。やたらと駐輪場の充実した京産大を過ぎてしばらくすると、貴船口の駅に着いた。

宇宙人的風景 オレンジのシールドから見た風景は全てがノスタルジックに映る。
新緑が目に美しいかどうかも不明。
1日これを被っていて、頭おかしくなったらどうすっぺね?

川床料理のお店を過ぎ、ひとまずは奥の宮までカブ夫を走らせる。奥の宮にカブ夫を停め、ここから本宮→結の社→奥の宮と参拝するつもりなのだ。ほんとうは、本宮→奥の宮→結の社と参拝すべきだとか。

夜には灯りの灯る石段 貴船神社は水の神様であると同時に、縁結びの神様でもあるらしい。
さらには鉄輪の女にもあるように丑の刻参りでも有名。
日が暮れてからここに来るのは、余程の覚悟がいると思うんだけど……。
あ、でも、京産大付近に住んでたら気軽に来られるか。
って、釘は打たないけれど。

ボトルwithご神水 ご神水&ご神水入りボトル。
ちなみにボトル代は500円。
貴船神社と浮き彫りにされている代物だが、蓋の構造に若干問題ありで、ちょっと水漏れする。

ご神水ボトルを背中に背負ったヒップバッグに入れ、今度はおみくじを引いてみる。水の神様だけにおみくじの結果は水に浮かべると、結果が浮き出てくる仕組。結果は大吉。失せ物は高いところから出てくる。転居は早い方がよし。願い事は必ず叶う。

おみくじを手に、今度は結の社に向かう。道の両脇にはぎっしりと川床料理の店が建ち並び、しかもそれぞれの店の前にはにこやかな客引きのおばちゃんがいるのだが、今回は誰にも声をかけられなかった。まだ時間が早いせいだからだろうか?それとも、宇宙人は地球の通貨を持っていないと思われているんだろうか?

怨念がうずまいてる気が……結の社は縁結びの神様の本領発揮の地である。
ここにずらっと結ばれた緑色の紙の中には、縁結びを切に願う女子(あるいは男子)の住所・氏名・願い事がつらつらと書き連ねてある筈である。
なんか、結びつけられた念がすごいことになっていそうだ。
こんなところに夜中に来るのは……やっぱり怖い。

奥の宮参拝も終え、これで貴船は制覇。再びカブ夫に跨り、更に奥地へと進む。「そうだ 京都、行こう」と言う割には、JR東海の意図している付近には戻らない。奥の宮を過ぎると観光地ゾーンは終わり、山歩きゾーンに入った感がある。段々と道が細くなり、終いには路面も荒れてくる。

ウホッ、いい山道 ここから先は曲がった山道。
荒れ気味の路面を見ては
「なんで道に穴ぼこ開いてて、石ころが転がってるんだよ♥うしゃ♥」
と思うようになってしまったイケナイ宇宙人。
でも、道端の小屋に入ったお地蔵さんはちょっと怖い宇宙人。

坂を上りきると、芹生峠という標識が出ている。そうか、ここは芹生峠っていうのか。何の展望もない場所なので、そのまま峠を下る。さっきよりは路面が綺麗で、杉の木立の暗がりがなんとも山っぽくていい感じである。暗がりが終わり、開けた場所に出ると今度は分岐点。普通ならば、白い木の看板に書いてある「左 山国を経て周山に至る」の方に行くべきなんだろうな、道も広いし。しかしながら、しつこいようだが、今日のわたしは一味違うのである。「右 花背峠に至る」側の細い道へと入る。まだ、時間は9:30を回ったところ。花背峠、佐々里峠と京都の峠を攻めてから、ぐるっと家に帰るつもりなのだ。ライダーっぽくね?わたしってば。

ウホッ、いい林道 小さな集落を抜け、少し経つと林道が始まった。
林道--とうとう1人で林道に入るようになってしまったのか。
道の両脇が崖になっているわけでもなく、前からも後ろからも車やバイクが来るわけではないので、楽しげな気持ちで走る。
時々、がががががっと杉の小枝がカブ夫's車輪に引っかかるが、落ち着いて引っこ抜いて進むと、今度は地面が湿ってきて、水溜りも出てきた。

ほんとに辿り着くのかなーと疑い始めた頃、ゲートに行く手を阻まれ、落胆するカブ夫選手。標識の嘘つきめ。花背峠には至れないじゃないですか。

結局、林道アタックをしただけで元来た道を戻ることになる。これじゃ、単なる林道好きの人みたいじゃないですか。決してわたしはそうじゃなく、その道が花背峠に続くというから入ったのだと、声を大にして言いたい。

なにかの儀式の後ですか? 林道の途中の斜面に謎のかかし軍。
左奥の緑色はドラゴン型の浮き輪。
何故にこんなところにこんなものがあるんだろうか?
烏なんかを追い払わなきゃならない作物があるわけでなし。
……単なる趣味のインスタレーションですか?

かかしに恐れをなして、山国を経て周山に至るルートに戻る。このまま、また赤橋に行って牛乳飲むのも芸がないよな。ツーリングマップルを繰って考えることしばし--日本海までもうちょっとじゃね?--折り返し地点を小浜市に決定する。待ってろよ、福井県め。かかってきやがれ、福井県。

佐々里峠を越え、佐々里川沿いの道を快適に進む。道は快適ではあるけれど、やっぱり半袖は失敗だった。曇りのままちっとも日が差さないので、ただ体が冷えていくばかりである。肝に銘じよう。どうせ山方面にしか行かないんだから、厚着かなと思うくらいでちょうどいいんだと。

寒さと戦いつつ、芦生ロードパークに到着。ロードパークという大層な名前がついているけれど、要は駐車場+トイレのある場所である。こんなところのトイレってどうなん?と思いつつ、入ってみると、思った以上に綺麗なトイレだった。スタンドでもらった箱ティシューが役に立つかと思いきや、きちんと紙付きである。しかし、ここのトイレって一体紙を交換しに来るんだろうか?

遊車道って。ねえ? 体をちょっとほぐして、更に進む。
38号線をぐっと進んで、次は遊車道ビレッジラインなるところに入る。
遊歩道じゃなくて、遊車道っすよ?お車様が楽しむ道路っすよ?1車線の道をぐぐっと上っていく。この道はそんなに悪かないよな。
ちょっと石が落ちてるけど。
しかも、その石を踏んづけてバランス崩しそうになったけど。

とうとう北陸入り。案外、福井と京都が近いってことがよくわかった。更に道を下りていくと、162号線とぶつかる交差点付近に“ふるさとあきない館”という建物があるのが見える。そろそろお昼だし、なんか食べようかにゃーと駐車場にカブ夫を停める。いや、結構走った。ヘルメットを脱ぎ、帽子を被る。お金はある筈だけど、いざ買う時点になって足りないと困るので、ヒップバッグの中にある財布の中身を確認……財布、ねえですよ?

ないわけないだろ?え?バッグの中身を全て出す。ない。ポケットに入れたかも。ない。カゴに落ちてるかも。ない。つまり、全く、影も形もない。つーことはなんですか。自宅から遠く離れた福井で、わたしは一文なしってことですか?誰かに連絡して迎えに来てもらうという手も、友だちいないッ子のわたしには使えない手なわけで……。友だち100人作っときゃよかった。どうするよ?

冷静に考えよう。冷静に。まずはカブ夫の燃料確認。目盛あと1つ。補給ゾーン分を足して、走れるのは100kmあるかないか=恐らく帰れない。しかも、また峠&京都市内を通過しなくちゃならないし……それは嫌だなあ。いっそのこと、小浜まで行って、お巡りさんにお金を借りるというのはどうだろう?つーか、貸してくれるかどうかわからないのだが、いたいけな一般市民が困ってるとあれば、500円くらいは貸してくれるんじゃなかろうか?何のための警察ぞ。

いや、もっと冷静に考えよう。金曜日が給料日だったため、珍しく潤っている財布の中身=現金のことしか考えていなかったのだが、よぅく考えてみたらカード類も入ってるわけですよね?銀行カード、郵便局カード、クレジット・カード&免許証。カード類、電話をして使用を止めて、また作り直さなきゃなんないんだよな。面倒くせえね。免許証はどうせ更新するんだから、なくしたって言ったらなんとかなるんかな?って言っても、なんとか自宅に帰れても、わたしの手元に現金は全くないわけで……。

まずは、探す努力をしよう。これが最初に来なきゃならない考えじゃね?すっかり忘れてた。

可能性としては、2つ。最後に財布を出したところ=貴船神社、あるいは最後に鞄をカゴから持ち出したところ=ロードパークのトイレ、このどちらかで落とした筈である。トイレで落としたら音がしたりでわかるとは思うんだけど、でも、きっとトイレで落としたんじゃねえかなあ……。つーか、なに。トイレ以外あり得ねえ。それ以外あり得なーい。←リトル若者文化獲得に成功。

貴船神社まで戻るのが嫌なので、トイレで落としたものだと自分自身に思いこませて、今来た道を戻ることにする。結局、福井には何しに来たんですかね、わたしは。今回は福井に負けってことなんでしょうか?チクショウ、次、待っとけよ、福井。

ビレッジラインを攻め、ロードパークに到着。パークには1台車が停まっているが、そんなものには見向きもせず、ヘルメット被ったままの宇宙人はトイレに猛烈ダッシュ★きっと、車の中のご夫婦は、わたしが余程切羽詰まった状態だと思ったに違いありません。切羽詰まった状態には違いないんだけど……やはり財布は影も形もなし。

Mama, do you remember? 呑気に写真を撮った場所付近を探しても、財布はなし。

母さん、ぼくのあの財布、どうしたでしょうね?

これからのパターンを考えてみる。
1.貴船神社のどこかで財布が見つかる→京都市街のコンビニでお金を下ろして帰る
2.交番に財布が届けられている→京都市街のコンビニでお金を下ろして帰る
3.財布が見つからない→交番でお金を借りて帰る
4.財布が見つからない→貴船神社でご神水容器を返却し、500円を奪還して帰る

どのパターンでも現金は戻らないものと想定しても、つまりは、貴船神社まで戻らなければならない。猫まっしぐらな勢いで走る。なんであんなに遠いんだろう?寒さは増すし、くしゃみは出るし、もしこれで風邪を引いたとしても、風邪薬を買う金すらないですよ。もうッ、自棄ですよ?減速せずに橋に突っ込んだら、思いの外速度がありすぎて、レッグシールドではなくステップをがりがりっとこする走りを見せつつ、貴船神社・奥の宮に到着する。勿論、駐車場に停める金などないので、路肩に失礼させていただき、奥の宮の路面調査に入る。

奥の宮、朝とは違い、人がいっぱいだった。こんなに人がいたんじゃ、財布なんてそのまま地面に落ちてる筈がない。それに奥の宮に参拝したときは、小銭がなくて財布出さなかったんだよな。ということで、地面を見ながら結の社へ。結の社で落ちている可能性があるとすれば、結の社から道路に出る階段のところ。階段を下りるのが面倒で、段差をぽんと飛んで下りたのだ。丹念に地面を見るが、やはりない。

貴船神社の階段をじっと見ながら上るが、やはりない。絵馬の前、ない。人、たくさん。きっとこの人たちは盗賊の一味で、わたしの財布の中身をきっちり分配しているに違いない。給料日後だから、中身たくさん入っていたもん。お賽銭箱の前、ない。ご神水の前、ない。こうなったら、もう頼れるのはあの人しかいません。

「すみません、この辺りにお財布落ちてませんでしたか?」
「あ、○○さんですか?」
「はいぃっ!」
み、巫女さん、サイコー!

宮司さんと中身の確認をし、本宮を後にする。警察への届けは宮司さんが取消の電話を入れてくれるとのこと。いや、さすが神職ですね。もう貴船神社には足を向けては眠れません。家に帰ったら、早速貴船神社がどっちになるのか調べます。

奥の宮横のカブ夫の元に戻り、ツーリングマップルを繰りつつ帰り道を検討する。最も近く、そして自然なルートは来た道を戻ること。つまり、京都市街を抜けて、イナイチひたすらコースである。しかし、それは、ねえ?次に考えつくのが、さっき通った芹生峠越えコースから162号線に入り、ぐるっと亀岡を通って帰るコース。これだとスタンドがないので、芹生峠でガス欠必至である。ということで、一旦柊野別れまで出て給油、それから持越峠を越えて、周山街道をちょっとかすり、篠山街道を通って173号線に入るルートを通ることに決定。そんなにしてまで京都の市街地を通るのが嫌なのか?嫌なのである。

このルートがどうなのか、ねいさんにはさっぱりな状態かと思われます。ディズニーランドからの帰り道、妹の素敵なナビゲーション・システムのおかげで千葉の町をあちらこちらと堪能されたことを覚えていらっしゃるでしょうか?つまりは、ああいう状態の道設定なのであります。

再びおもしろげな木の生え方 京都市を出たり入ったり、落ち着きのない子どもの如くカブ夫選手は進みます。
持越峠を越え、周山街道に入り、前に通った477号線を通る。
あの頃は477号線ってすごい山道と思っていたが、今となるとそうでもないかも……と思えてくる。
経験ってのは積むもんである。

惑わしの街・亀岡で幾分迷ったものの、後は順調に能勢を経由して、ハーレーの軍団に交じりながら173号線を爆走して、自宅に着いたのは出発してから12時間後のことでした。冷えすぎの体に、風呂のお湯がじっくりと染み込んだことであります。

・いつか福井にはリベンジしたい。
・怖いもの財布紛失>>>>>>>>ガス欠